100年ふくしま。

vol.073 e’s cafe 笹本絵美さん

2022/07/26
vol.073 e’s cafe 笹本絵美さん

100-FUKUSHIMA Vol.073

e’s cafe 笹本絵美さん

いざ、カフェへ

趣味は喫茶店で本を読むこと。
学生の頃にそう話した友だちがいた。
「趣味は喫茶店で本を読むこと」。その言葉の率直さに心打たれ、その人の目を見つめるばかりだった。友の思いを胸の中にしまい大切にしよう、そう思った。今も時折、思い出す。カフェではなく喫茶店と言っていた頃のことだ。

いざ、カフェへ。
車で出かけるのもいい。
時にはふらりと電車もいい。
我が町から電車で13分。到着駅から歩いて5、6分。この春、本宮のこの地でイーズカフェに出合ったことはなんてしあわせなことであろうか。

escafe_01
escafe_02

どうぞ1〜2名様でお越し下さい

本宮市にあるイーズカフェ。小さいけれど心をとらえるカフェだ。ガレットの美味しさをここで教えてもらった。
イーズは、和らげる、緩める、楽にするなどの意味をもつ。
「ゆっくりと過ごしてほしいという思いから、カウンター席のほかは、ソファーを置いています。小さいお店ですので、1〜2名様でお越しいただくようお願いしております」
店内には、古い家具や植物などが置かれ、思い思いにくつろげる空間が作られている。

escafe_03

子どもの頃からお菓子づくりが好きでした

店主の笹本絵美さんが、通り沿いに店を構えたのは3年前のことだ。
「私は、医療専門学校を卒業して、調剤薬局の医療事務の道に進みました。学生の頃からカフェ巡りが好きで、社会人になってからも休日は県内外のカフェへの旅をすることが生きがいのようなものでした」
いつの日か自分のお店を持ちたい。カフェへの思いを「いつかいつか」と呪文のように抱えて過ごしてきた。
笹本さんは、子どもの頃から、お菓子をつくるのが好きだった。友だちに食べてもらうと美味しいと喜んでくれた。その笑顔を見ることがうれしかったと話す。
あるとき笹本さんは、転職することを決める。
お客さまを迎える側になろう。いつか自分の作ったものをお出しする。それを美味しいと喜んでもらいたい。その笑顔を見ることができたなら。小さな頃の幸せな思いはずっと胸の中に生きていた。

073escafe
escafe_05
「オープンに向けて、店内の改装は友人の力を借りながら出来ることは自分でやりました。大変でしたが楽しかったです」
アンティークのソファが居心地の良い穏やかな空間です。

手作りのスイーツ、ガレットをお楽しみください

これまでに、いくつかのお店で仕事をし、多くのことを学んだ。主にスイーツやデザートを担当し、その経験は貴重なものとなる。
「お店をオープンする際、ドリンクやスイーツメニューを決めるのが楽しかったですね。ひとりで切り盛りするのでフードを何にしようかと迷いました。そこでクレープに似ているガレットに行きつきました」
ガレットは、フランス、ブルターニュ地方の郷土料理でそば粉で作る。料理としてもスイーツとしても喜んでもらえたなら、家庭ではあまり作らないものを、という思いもあった。
「試作を重ね、南会津のそば粉に落ち着きました。そば粉を使うガレットは、植物繊維も多く免疫力を高めてくれる料理です」

escafe_06

おばあちゃんの作った野菜が大好きな子どもでした

「好きなものは小さい頃から変わりませんね。おばあちゃんの作った野菜が大好きな子どもでした。地元の野菜は素晴らしいです。なんと春菊をそのまま食べて、その美味しさにとても驚きました」
野菜を育てている農家さんの熱意を感じる瞬間だ。
サラダのガレットに使う野菜は、地元のお店や直売所などへ直接足を運び求める。旬の野菜を手に取りながらあれもいい、これも美味しそうとつい大量に仕入れてしまうと笑う笹本さんだ。

escafe_07

人生は一度きり

「実は、転職することを決めたのは、父が亡くなったことがきっかけでした。定年退職して間もなくのことで、倒れた次の日に父は亡くなりました。あたりまえのように明日が来ると思っていたけれど、明日という日はいつ来なくなるかわからない。やりたいことをやるなら今しかない、そう思いました。退職したあとは、写真を撮ったり本を読んだり音楽を聴いたり好きなことをして過ごすことを楽しみにしていた父は、私の良き理解者でもありました。実現したお店を見てもらうことは叶いませんでしたが、父が生きていたら、応援してくれたと思います」
お父さまの死が背中を押してくれた。「人生は一度きり」という思いが強くなったと話す。
お店のカウンター席には、お父さまが使っていたカメラが置かれている。手にとればずっしりと重いその感触からはカメラへの思いが伝わってくるようだ。

今年8月20日で4年目を迎える。
あっという間の3年だった。2019年の10月13日、オープンして2か月後の水害は心が折れそうだった。
「町全体が不穏な中、知人から、こういう状態だからこそ出来る人から再開した方がいい、今こそ町の人に灯りが必要だと思う。そんな言葉に背中を押され励まされました」
コロナ禍の今も、お客さまのために自分が出来ることすべきことをコツコツと重ねていきたいと話す。

イーズカフェ。平日の店内は、地元のお客さまが訪れます。赤ちゃんを胸に抱きながらソフェに座り、静かな時間を過ごす若いおかあさん。通りから店内の様子を確認してから来ました。と笑う年配の女性。聞けば、いつも満席なのであきらめて帰るとのこと。今日は席が空いていて良かったですとニッコリされました。
会計をしながら、キャロットケーキ美味しかったですと絵美さんに声をかける若い女性お二人は、ネットでこの日にこのケーキがあることを確かめてから訪れたということでした。
日曜日は、夜カフェの日。ガレットはお休みです。スイーツと飲み物でゆっくりとお過ごし下さい。
それではまたいつか。明日がいい日でありますように。

escafe_08

– – –
e’s cafe
〒969-1133 福島県本宮市本宮中條11-2
0243-24-6153
11:00〜17:00 ラストオーダー 16:30
  夜カフェ / 日曜日 13:00〜20:00 ラストオーダー 19:30
土曜日  あり

2022.05.25取材
文:kame 撮影:watanabe

100年ふくしま 記事への感想を投稿する
※取材対象者への問い合わせフォームではありません。

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

100年ふくしま。の記事

vol.084 東北エスピー/ギャラリー菜根 山田浩さん

vol.084 東北エスピー/ギャラリー菜根 山田浩さん

vol.083 菊屋 菊地敏春さん

vol.083 菊屋 菊地敏春さん

vol.082 トトノエル gallery cafe 芳賀沼智香子さん

vol.082 トトノエル gallery cafe 芳賀沼智香子さん

081 美術家 中根秀夫さん

vol.081 美術家 中根秀夫さん


TOP