100年ふくしま。

vol.072 一級建築士事務所hana 鈴木千寿子さん

2022/04/28
072 一級建築士事務所hana

100-FUKUSHIMA Vol.072

一級建築士事務所hana 鈴木千寿子さん

いい家って何だろう

郡山市の一級建築士事務所 hanaの鈴木千寿子さんは、福島民友新聞社が発行する情報紙で「家づくり」をテーマにコラムを書いています。内容は、お客様とのやりとりや暮らしの出来事から気づいた発見やアイデア、専門家としての意見など、普段の鈴木さんが話しているような、自然体な文章で書かれています。

いい家って何だろう 012「家づくり」は本当に幸せなことです!

いい家って何だろう?
私が考えるいい家とは、家族が日頃からリビングやダイニングに集まり、たわいもない話をし、みんなが笑顔でいられる家です。
家づくりには土地の選定から完成・引越しまで、長い期間を要します。
日常生活をこなしながら、家づくりを進めて行くことは容易なことではありません。
情報を集め、打合せを重ね、時には家族と意見が合わなくなることもあるかもしれません。
でも、そこで一呼吸…家づくりは本当に幸せなこと、自分は幸せのど真ん中だと感じて下さい。

福島民友新聞社発行 こおりやまゆう4月号(2016/03/25)掲載
コラム「いい家って何だろう 012「家づくり」は本当に幸せなことです!」より一部抜粋

新しい家への憧れ

一級建築士事務所 hanaは、住宅・店舗の新築、リフォーム、リノベーション設計のほか、施工会社での業務サポート、インテリア資材専門店でカーテンなどの空間のコーディネイトを行っています。
鈴木さんは、子どもの頃の情景が現在の仕事につながっていて、その頃暮らしていた家を今でも図面に起こせるくらいよく覚えていると話します。
「子どもの頃に住んでいた家は、とても古く冬も寒かったため、新しい家への憧れがあり、住宅の広告にある間取り図を見ては、誰がどの部屋を使おうかなどと、想像力を膨らませていました。同じ頃、一緒に暮らしていた祖父母が、孫たちに特別な経験をさせたいと猪苗代町に小さな別荘を建てました。モダンな対面キッチンのカウンターで、おばあちゃんが私と弟にオレンジジュースのグラスにストローを挿して出してくれ、わくわくしながら、日常と非日常を体感していました。そして、施工会社で現場管理をしていた父からは、休日も雨の日も、地震の時も現場に異常はないか確認をしに家を出ていく姿に、建築の仕事の大変さを見ていました。それらの出来事が今の自分の材料だったのだと思います」

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建築士とその周りを支える仕事

子どもの頃から算数、数学が好きで教員になることを目指していた鈴木さんでしたが、教員課程のある大学の建築学科に入学したことで、設計する楽しさを知っていきました。
「大きな公園の中に住宅を建てるならどんな家がいいだろう、自分で考えて、図面に描いていくことに面白さを感じていきました」
卒業後に入社した設計事務所では、建築物の写真を眺めるだけでも楽しかったと話します。
「入社前の期間に事務所が手がけた建物の写真や資料の整理を手伝い、その合間を見て、CADの使い方を教えてくれる先輩がおり、毎日が楽しく過ぎていきました。所内ではみんな作業に集中し、ペンの走る音だけが響く時間に心地よさを感じました」
入社して間もない頃。鈴木さんは日々、膨大な設計業務をこなしながら、これまで事務所が手がけた公共施設などの現地調査を行うことになりました。
「施設の現地調査は、住宅で言うところのアフターフォローです。やらないより絶対にやったほうがいい調査ですが、どう進めて良いのかわからず戸惑いがありました。今後の建築の仕方にも関わってくるため、そこで働く職員の方から使用状況やこうすればもっとよかったという改善点など、わかりやすい回答を得るため、アンケートの作成には所内での質問の仕方や用語の確認と大学の専門の先生を訪ねて調査にどんなアプローチができるのかを学んでいきました」
また学校の大規模な新築工事の時には、事務所としても初めての試みであった校舎完成までの過程を全校生徒に伝える「学校づくり新聞」の作成に携わりました。
「工事に使われるクレーンが2トン吊り下げられるとしたら、『2トン』は『車1.5台の重さ』というような具合に、専門的な工事の過程を、子どもにもわかる言葉と身近なもので説明するよう心がけていました」
2ヶ月に一度発行された学校づくり新聞は、全校生徒に配布され、自分たちの学校ができていく様子が子どもたちとそのご家族に伝えられました。
鈴木さんは、結婚前に一級建築士の資格を取得し、子育ての時期に独立。お母様の介護と子どもの面倒をみながら、限られた時間の中で自分にできることを探し始めます。
鈴木さんはそれを「設計士の営業」と呼び、設計を必要とする会社を訪ねて設計業務のサポートを行い、資材専門店でカーテンなど空間のコーディネイトを提案するなど、専門的なスキルで経験を重ねていきました。
「自分で子どもを見ながら、できることをやっていこうと考え、先方からは制限のある中で本当にできるのかとよく問われていましたが、自分の性分として、できますといつも答えていました。私は一般的な建築士のイメージと異なるかもしれません。『建築士としてこんな建物を作りたい』ということより、難しい条件や依頼に、こうしたらもっと良くなるんじゃないかということを考えていました。周りから与えられる仕事や依頼に、初めは戸惑いながらも、やり続けるうちに続いてきたのだと思います」

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一級建築士の資格を取得した際は、その勉強に集中できるようにと生活の面でご家族の協力がありました。
「一級建築士の資格を持ったことは、仕事をしていく中で大きな『信用』になっているのを実感しています」
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いつも身につけている腕時計は、20歳の誕生日にお父様から贈られたもの
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丘を越えていくように、もっとよくなる家づくりを

「家づくりの相談は、建築をしているようで、これから先の暮らしを考えるお客様と自分の人の部分に関わっている感じがあります」
鈴木さんは、毎月住宅プランの相談会を開催しています。季節のお菓子とお茶をおともに、鈴木さんご自身の結婚や出産、ご家族の介護など生活の変化から、また、日々大忙しの家事や子育ての経験から様々な目線を持って、お客様のお話しに耳を傾けます。
「家づくりに関して周りの情報の多さから、とても目の肥えたお客様は多くいらっしゃいます。ただ、きれいな『家のかたち』が先行してしまい、ご自身の暮らしを『家のかたち』に当てはめてしまったり、当てはまらない部分は諦める、メンテナンスに負担があっても仕方がないとしてしまうのは本当に勿体無いことです。家づくりは、これから先の暮らしに望むことをご家族で楽しく具体化できるせっかくの機会です。雑誌やカタログでご自分がいいなと思うところ、家に望むことをたくさん伝えてほしいと思います」
住まう環境や譲れない条件など、お客様が家に求めるものに一つとして同じものはありません。
鈴木さんは、その要望に耳を傾け、ひとつひとつ満たしていくことで、そのご家族の『家のかたち』になっていきます。
「要望を満たし、家をかたちにしていくことは、毎回丘を越えていくようなもの。もっとよくなり、できることがあるのではないかと考えながら、もう少し家づくりに関わっていたい。そうして、この先もやっていくのだと思っています」

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一級建築士事務所 hana
http://space-design-hana.com/
〒963-8022 福島県郡山市西ノ内一丁目21-4 白龍ビル2階
080-1806-9389

2022.04.05取材
文:yanai 写真:BUN

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