100年ふくしま。

vol.052 TRUSS HOME 古川広毅さん

2020/02/20

vol.052 TRUSS HOME 古川広毅さん

100-FUKUSHIMA Vol.052

TRUSS HOME 古川広毅さん

地域の暮らしが魅力的であること

Y字型の道路の挟まれた、三角の敷地に建つ、TRUSS HOME。
建物1階には、週に3日営業するカフェとレンタルスペースがあり、2階はトラスホームのオフィスになっている。
「この建物は、なかなか借り手が付かなかった貸店舗でしたが、オフィスとカフェにリノベーションをして、自分でも使いながら1階を街に開いていくことで、地域の方にも楽しんでもらえる場所にしようと思いました。この地域の暮らしが魅力的であることは、地域の価値を上げていくことにつながると思うのです」
2010年に設立されたトラスホーム株式会社。その成り立ちは、古川家が江戸時代に新潟県から郡山市小原田に移住し、農家として田畑を持っていたことから始まる。それが今も受け継がれ、代表取締役の古川広毅さんは、ご家族とともに不動産賃貸業を営んでいる。古川さんは、ご自身の仕事を『大家業(おおやぎょう)』という。
「入居者さんとのつながりをちゃんと考えていきたいので、そう言った方が自分に馴染む感じがあります」
トラスホームでは大家業の役割を「小原田の里守(さともり)」と名付け、地域の歴史・環境・人と人との関係を再び耕し、これからの暮らしを育んでいくことをミッションに掲げている。
1階玄関で靴をぬいで上がると、授乳室完備の小さな子どもも安心して過ごせるようなオープンなスペースが広がる。
晴れた日は外のデッキでバーベキューをしてもいいし、コーヒーのテイクアウトに立ち寄ってもいい。
そんな場所は、日々の暮らしにわくわくすることを増やしてくれる。

トラスホーム
オフィスの設計は、東京の設計事務所スターパイロッツ。
古川さんがリノベーションを学ぶために参加したスクールをきっかけに、想いに共感する設計事務所とつながりを結んできた。

ひとりではできないことをやりがいに

「小学校から中学に上がるくらいの時に、父が自宅を建てることになりました。大工さんが建てる木造の家で、出来上がっていく様子を見て、すごいなと感心したのが建築に興味を持つきっかけでした。自分が出来ないからこそ知りたいと思いました」
古川さんは大学で建築を学んだのち、建築会社へ就職。そこで、苦労がかたちになっていく達成感や現場をまとめていく大変さを感じながら、多くの改修、増築工事に携わり、その経験が現在の既存の建物を活かすことにつながっている。
それから、ご実家の不動産賃貸業を手伝うことになり、やがて、地域の暮らしづくりを目指すトラスホームを新設することになった。
トラスホームという社名は、古川さんとご両親の三人で決めた。
「家族で相談して、トラス(TRUSS)という言葉の意味、語感もよく、自分だけでなく周りの人たちとも力を合わせることで、さらに強い構造をつくりたい。そうした思いが社名になりました。今あるものをいかに長持ちさせるかを考えるのが好きで、既存の建物のメンテナンスをしっかりやっていこう。そこから既存の建物を活用して、街やエリアの価値を高めることを勉強していくことになりました」
古川さんには、賃貸住宅の退去立ち会いの際、汚れや傷がないかなど細かい確認作業で入居者との間に相違が生じ、最後のお別れが気持ちよく終われなかったという経験があった。退去する方とお互いにいい顔をして、次の暮らしへ見送りたい。大家業として、そうした人や地域との関係性を育んでいくトラスホームの「暮らしづくり」の姿勢にもなっている。
「大家業として物質的な目標、例えばお金の面だけを目標にしてしまうと、それを達成した後に何をしたらよいのかわからなくなるなど、モチベーションに限りがありますが、目に見えないこと、例えば良好なコミュニティの形成を目標にすれば、答えが一つではなくなり、終わりがなく、自分だけではできないことも様々な分野の方々と協力し合うことで、やりがいにすることができます」

TRUSSHOME CAFE
カフェを始めるにあたり、郡山市のOBROSS COFFEEにコーヒーの淹れ方を教わった古川さんらスタッフ。
「マシン選びも手伝ってもらい、オブロスさんがいなかったらカフェはできなかった」と古川さん。

ロカド香久山、地域のつながりを育む暮らし

「画一的なアパートを建てていくことにどうしても気が進まず、会社としてこれからの方向性を示すものを建てたいと思いました。まちづくりという視点から、地域の価値を上げられるような賃貸住宅を建てよう。それがロカドの始まりでした」
トラスホームとして初めて手がける新築賃貸住宅の「ロカド香久山」。
2年ほど前から、東京の設計事務所ブルースタジオとともに進めてきたプロジェクトが今年の春に完成する。
ロカドが建つ七ッ池町は、かつての小原田村であった場所。「小原田の里暮らし」をコンセプトに、炉を囲むように3棟が佇み、中央の中庭と交差点の角のオープンスペースは、入居者だけでなく地域の人とのつながりを育んでいく。
昨年秋に棟上げと秋祭り、年明けには小正月まつりを開催し、餅まきや団子さしなどを行い、建設中からすでに「小原田の里暮らし」が始まっている。

ロカド小正月まつり

各棟の1階、2階各部屋から見えるロカドの風景は異なり、1階のベンチや掃き出し窓の縁に腰を掛ければ、縁側のように使うことができ、2階からは中庭全体を望むことができる。
室内の間仕切りは最小限に抑えられ、住民はスペースの使い方に思いを巡らし、自分らしい暮らしを作ることができる。
中庭に季節を感じながら向かい合う住まいは、ロカドの住民たちはもちろん、ご近所の方たちとも偶然にあいさつをし合えるようなつながりが生まれやすい関係性を目指している。
古川さんが里守として、人のつながり、交流を大切にする「小原田の里暮らし」がここにある。

ロカド香久山

ロカド香久山_室内
窓の向こうの中庭は、これから植樹が進められ、四季折々の風景になっていく。

よいと思う気持ちや考えが集まるところ

「里守として、人の交流、歴史を積み重ねて環境を活かすことを、今ある他の建物でも表現していきたいと思います。その考えをこれからは『ロカド』以外の建物にも波及させていくために、今、築22年になる5階建てのマンションの改修を考えているところです。当時のタイル張りでできた良い建物で、その中にあまり使われていない中庭があり、そこをどう使おうかという話しになっています。1階のベランダとして、単純に部屋の価値を上げることはできるのですが、やはり地域に開かれ、入居者さんの憩いとそこを散歩する人との交流がある場所にすることが、里守としてやるべきことだと思っています」
古川さんは、不動産を自分の持ち物だけでなく、そこにはいつも人が流れ、集まる場所にしようと考える。
そしてトラスホームには、古川さんの考えに共感する人たちが集まる。
カフェのコーヒーやケーキ、キッチンのタイルやインテリアの選び方に。オフィス敷地のアプローチ、面白いかたちの外壁に。その人たちの想いを、そこかしこで垣間見ることができる。

TRUSSHOME

– – –
トラスホーム株式会社
http://www.truss-home.jp/
福島県郡山市字名倉276-1
024-937-5870

TRUSS HOME CAFE(トラスホーム株式会社1F)
024-937-5870
カフェ 月水金 9:00 – 16:00
レンタルルーム 月水金17:00 – 21:00、木土日 9:00 – 21:00
火曜日
敷地内2台、敷地外5台

2019.12.27、2020.01.18取材 文:yanai 写真:BUN

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