郡山全集|郡山、カフェ時間
076 CAFE ZAZA 村田哲二さん、弓子さんご夫妻
CAFE ZAZA、窓からの風景
CAFE ZAZAは、郡山市磐梯熱海町石筵の山間にある。
しばらく林の中を行くと道の向こうに水色の建物が見えてくる。空に向かって建つ北欧風の建物は小高い丘にあり、足をとめ見入ってしまうほどに美しい。
これで2度目の訪問。カフェの窓から見える風景にもう1度会いたくて足を運んだ。
窓の外には冬枯れの木立が広がる。目を凝らすと赤い三角帽子をかぶった小人たちが思い思いの姿でたたずんでいるのが見えた。
「この森には、こびとの妖精ノームが住んでいるんですよ。ほら、あそこにもあの木の陰にも。けっこういますよ、探してみてください」
オーナーの村田哲二さんがニッコリとして言う。
私は少し驚いて、それでもああそうなんだとすんなりと受け入れていた。
妖精ノームがいるというだけでスクリーンの中の不思議な世界を見ているような思いになる。なにやら楽しく、やがて音のない静かな風景が気持ちを落ち着かせていく。
カフェZAZAとクラフトZAZA
CAFE ZAZAは、心惹かれるものに囲まれている。
壁にはいくつかの絵が掛けられており、どれもが柔らかい色彩で視界に入るたびに心が穏やかになる。
店内にはギャラリースペースがあり、椅子や棚、動物をモチーフとした木工のクラフト作品が置かれている。全て村田さんの手から生まれたものだ。
この建物は、1993年に1階をギャラリースペースとして建てたという。
村田さんと奥さまの弓子さんはそれぞれに木工作家・絵織り作家で、この場所で作品の展示会を開いた。その後、顔馴染みのお客さまも増え、ふたりを訪ねて来られる機会も多くなり、やがて人々の交流の場所になっていった。
2000年の10月7日に、ふたりはCAFE ZAZAをオープンした。
「私たちは、始めから終わりまで一環して出来ることを仕事にしてきました。物作りもそうです。オープンするにあたって気づいたことは、カフェも同じだということです。食事やスイーツなどお出しするものは素材を選ぶことから始まり、すべて自分たちで作っております。お客さまにはこの空間でゆっくりと過ごしていただきたいですね」
ふたりの丁寧な手仕事が日々、居心地のいい空間を紡いでいく。
ふたりの手仕事
「こういうものを作ってほしいが出来るかどうかとお客さまに相談されることもあります。そういう時には出来ないと思わないことが大切です」
と村田さん。出来ないと決めつけない、まずは出来る方向にものごとをとらえ想像することが大事なのだろう。
作品の依頼があるときには、カフェでの仕事を終えてからが制作の時間。ふたりはそれぞれの工房で黙々と手を動かす。
初めてカフェを訪れた時のこと、窓際に掛けられたタペストリーが記憶に残っている。繊細な色合いが印象的なその作品は、弓子さんが手がけたものだろう。
下絵に添いながら、さまざまな織糸で色を織り込んでいく工程は手と腕に負担がかかる作業と聞いた。
「自分の背丈ほどの大きな作品に取り組むときは大変ですね。腱鞘炎になってお医者さまにかかることもあります」
作品が完成するまでの苦労を笑いながら話す弓子さん。きちんとしていてゆるやかで、笑顔のステキな女性だ。
「ZAZA」というのは以前、飼っていたネコの名前です。
お店に入り、まず目につくのは琺瑯製の薪ストーブです。季節が秋から冬に向かう頃になると火が入ります。
冬の日には、燃える薪の炎は魅力的です。身体の芯までぬくもる薪ストーブの暖かさは何にも代え難く、ついうっとりとしているとネコさんがどこからともなく近寄って来ました。ZAZAの人気者、グレイです。
「グレイは人間でいうとあと数年で100歳になります。もうだいぶお年寄りなんですよ。寒くなるとこうしてストーブの前に来るんです」
弓子さんがひょいと抱き上げるとグレイは気持ちよさそうに目を細めました。
おふたりはネコが好きで、グレイで5代目になります。
ZAZAというのは前に飼っていたネコの名前なのだそうです。
ZAZAのショップカードには、こびとの妖精ノームがいます。
赤いとんがり帽子に丸い鼻、白く長いヒゲの小さなおじいさんです。
青い上着に長靴をはき、くりんとした目で木を見上げています。
片隅に、原発NO!の文字を見つけました。
おふたりの静かできっぱりとした主張です。
CAFE ZAZA
- 〒963-1301 郡山市熱海町石筵萩岡2-19
- 024-984-5005 024-984-5006
- 金・土・日・月曜日、祝日は営業 AM11:00〜PM17:00
*1月・2月・3月はお休みになります。 - 火・水・木曜日
- 有り
2014.11.14取材 文:kame 撮影:watanabe