郡山全集

カフェスイートほっと岡部早苗さん

2011/06/30

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郡山全集|郡山、カフェ時間

063 カフェスイートほっと岡部早苗さん

「カフェ スイートほっと」は、障がいを持つ人が働いているお店です

ドアを開けると、お菓子の焼けるいい匂いに包まれ、店内は女性ボーカルの静かな音楽が流れている。
北欧風のシンプルなテーブルと椅子、窓際にはゆったりとくつろげるソファーが置かれ、訪れる人の心を誘う。
店内と厨房を仕切るガラス戸の向こうに、コック服をまとった数人のスタッフがせっせと手を動かしている様子が見えかくれする。
「カフェスイートほっとは、障がいを持つ人が働いてるお店です。2008年10月に社会福祉法人ほっと福祉記念会の就労継続支援A型(雇用型)としてオープンしました。スタッフひとりひとりの持ち味を生かして作業を分担しています。おいでくださるお客さまにホッとくつろいでほしい、笑顔になってもらいたい、そんな思いから作られたお店です」
カフェチーフの岡部早苗さんは、この店でサービス管理責任者として活動している。落ちついた声で丁寧に話をする、何よりも親しみのある笑顔が印象的な女性だ。

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岡部早苗さん。
「子どもの頃は男の子でした(!)さなおって呼ばれてました(笑)」今では、二人の男の子のおかあさんです。
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「おいしくなーれ」と呪文を唱えながら作ります

カフェスイートほっとの本部である社会福祉法人ほっと福祉記念会では、障がいを持つ人のために生活訓練や就職の手伝い、身の回りの世話などさまざまな福祉サービスをしている。
「今ここにいるスタッフとは以前から作業訓練のひとつとして、お菓子作りをしていました。口コミで少しずつ販売もするようになってブライダルのご贈答品としても声をかけていただけるようになりました。どこで作っているの、どこに行けば買えるの、という問い合わせも来るようになり、みんなからもお菓子作りを生かしてお店をやりたいという声が出はじめたのです」
就労継続支援A型(雇用型)でのカフェ部門は福島県でも初めての試みで、マニュアルが無い中での暗中模索のスタートだったという。
「今でもそうですが、あの頃は不安だらけの毎日でしたね。当初は3ヶ月持つかどうかと回りの人に言われましたが、1年が経ち2年が過ぎ、おかげさまでなんとかここまで来れました。現在、支援スタッフ4名と9名のメンバースタッフが従事しています。お菓子はメンバースタッフがいないとできません。お菓子作りを始めて9年になる方もいるんですよ。もう立派な職人さんですね」
ひとりひとりそれぞれにキラリと光るところがある。それを大事にしてやりたいと岡部さんは言う。
毎日、「おいしくなーれ」と言葉をかけて作るお菓子。コーヒーも「おいしくなーれ」と呪文を唱えながら煎れるのだという。
岡部さんたちスタッフの誠実で丁寧な仕事ぶりが伝わってくるようだ。

一日一日をみんなと楽しく、
笑って家路に着けるように

「3.11の地震は本当に怖かったです。私はとっさにオーブンを押さえましたよ。火もたくさん使っていたし、お客さまもいらっしゃいましたが、あまりパニックにならず冷静に対応できたと思います。みんな無事で本当に良かったです」
震災後は3月23日から営業を再開。たくさんのお客さまが訪れ、お互いの無事を確認し喜び合った。
一人のお客さまの「開いててよかったです。人にはこういうホッとできる場所が必要なんですよね」という言葉が、岡部さんの胸に今も残っている。
「私自身、震災直後の町に光がなかった時に『店を開けよう、店に灯をともすことが大事なんだ』と思いました。カフェは人と人の心が通い合う場所でもあるんですね。震災は、今までの平穏な暮しを奪ってしまったけれど、当たり前に生きることのありがたさ、繋がる気持ちの大切さを教えてくれました」
お店は、今年の10月で丸3年目を迎える。クッキーやマフィン、ケーキ、プリンなどのお菓子の他に、ピザやチキン料理などのランチメニューも少しずつ変化し増えてきた。忙しさがピークになるランチタイム時には、スタッフたちの的確な動きが欠かせない。
「例えば誰かがミスをした場合、必要以上にカバーしてもいけないし、時には叱らなくてはならないこともあります。けれどそれは信頼関係があってのことなのですね」
感受性が豊かなスタッフたちは、岡部さんの言葉を自分でわかる範囲で聴こうとする。そして解ろうとする。落ち込むこともあるが、長く悩む事はあまりない。数分後にはケロリとしていることもある。そんなみんなを岡部さんは頼もしく思う。
「一日の仕事を終えて、悩み事はできるだけ職場で解決していきたい。笑って帰れないと次の日に元気に出勤してこられませんからね」
これからもみんなと穏やかな気持ちで家路に着けるように、そんな日を多く過ごせるようにガンバリたいと話す岡部さんだ。

■就労継続支援A(雇用型)とは?
一般企業などで就労が難しい18歳(特例15歳)以上の障がいを持った方に、働く場を提供し、お給料を支払います。
自立した日常生活、または社会生活ができるように、利用者さんの心身の特性に応じた個別支援計画により、充実した地域生活ができるように支援します。

カフェスイートほっと

  • 〒963-8835 郡山市小原田3丁目10-4
  • 024-954-7760
  • AM11:00〜PM18:00
  • 毎週水曜日
  • 有り8台

2011.05.23取材 文:kame 撮影:watanabe

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