もっと知りたい郡山の農業
畜産業 渡辺昭一さん
今が正念場。覚悟をもってやれることをやる。
手をかけて取りあげた牛は人なつこくかわいい
郡山市西田町の渡辺昭一さんはお父さまの昭彦さんと二人で繁殖に携わる畜産業を営んでいます。
「もともとは農家で、父の代から堆肥を作るために牛を飼いはじめ、今は後継者として繁殖業をしています」
渡辺さんは、高校卒業後、北海道で一年間酪農を経験しました。その後、畜産と稲作農業をしながらJAに勤務し、50歳で退職して本格的に牛と関わり9年になります。
「現在、4頭の親牛と2頭の子牛がいます。受胎、分娩の大変さは牛も人間と同じ。お腹の中で育ちすぎて難産になったりするし、土の上で産むので破傷風にかかったりします」
牛によって特徴があり、知らないうちに産んでいたり、逆に人の手をあてにする牛もいます。特に手をかけて取りあげた牛は人なつこいといいます。
春先に咲くはこべやよもぎは大切な栄養源
牛の繁殖は、間を置かず定期的に子牛を生産することが期待されますが、今回の原発事故以来、渡辺さんは牛の繁殖障害に苦しんでいます。
「2月の始めに分娩した牛がまだ妊娠しないのです。通常なら60日以内の4月には受胎してもいい頃。獣医さんからは繁殖障害ではないかと診断されました」
渡辺さんは、春先の畦道に咲く草花を食べさせないことが原因ではないかと考えています。
「雪解け道に咲くはこべやよもぎはビタミンが豊富で牛にすれば薬草なのです。それを原発事故の影響で食べさせることができないでいます」
渡辺さんは、行政の指示を待たずに自分で牧草地の除染対策をやろうと考えています。
「リスクはあるけれど、天地変えをしてまきたい種をまく。その上で草の検査が通ればOK。自信を持って牛に与えられます」
周りの畜産農家が廃業を考えざるを得ない深刻な事態の中で、渡辺さんは自分にやれることは何かを考えながら前に進みます。