100年ふくしま。

vol.071 La Bottega 安藤好則さん

071 La Bottega ラ・ボッテーガ

100-FUKUSHIMA Vol.071

La Bottega 安藤好則さん

貧しいスープ

スープを一口すすると、なんだか懐かしい気持ちになった。
子どもの頃、かぜをひいて学校を休んだ日。母親がこれだけでも食べなさいといって作ってくれたおかゆのような。
どうしてかはわからないけれど、「お母さーん」と声をあげたくなる。
私とカメラマンはスプーンを持ったまま、そう言い合った。
材料も、見た目も、とてもシンプルなのに、あたたかくてやさしい。
初めて味わった、イタリアの「貧しいスープ」とは、そんな味だった。

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「イタリア料理では、よく『貧しい皿』『貧しいスープ』といいます。それは食べ物がない時代に、貧しい庶民の暮らしの中でどうやっておいしく食べるかを考え、作られた料理だからです。パスタでも、地方や町によって呼び名が変わったり、そこでしか味わえない料理もあります。イタリア料理は、郷土料理のかたまりなんです」
リストランテ ラ・ボッテーガ、店主の安藤好則さんがそう教えてくれた。

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人生なんてあっという間

リストランテ ラ・ボッテーガは、昨年10月に須賀川市にオープンした。
一軒家のレストラン、そのエントランス前には、安藤さんが育てる小さなハーブ畑がある。
1階の客席はカウンターとテーブル、そしてキッチンがある。キッチン裏に「うちの心臓部」というパスタの製造部屋。
2階はプライベートスペース。
店のテーブル、椅子、棚やトイレの愛らしいピクトまで内装のすべてを安藤さんが手がけている。
「人生なんてあっという間だから、忙しく夢中に生きたい。なにに夢中になるのかをずっと探していました」
あっという間の人生なんだから、これがやりたいと思ったら、とことんやる。やってだめなら戻ればいい。
そう思いながら、店づくりにも2年かけ、毎日作業を続けて来た。
料理を志す以前、家業の土木の仕事に携わっていた安藤さんは、建築・土木を学んでいた学生時代に経験したヨーロッパ旅行が忘れられなかったと話す。
「大学に入学したばかりの夏休みに、父親に勧められて参加した旅行でした。ヨーロッパ建築の視察を主な目的とした旅で、初めは行く気がなかったのに、旅行から帰ったらまた行きたいという気持ちになっていました。土木の仕事をしていた28歳の時、主に担当していたのは公共の仕事でした。自分なりに一生懸命働いていましたが、自分が目指したいことを表現することはできませんでした。そんなときに、学生時代に経験したイタリアでそこに身をおいて暮らしてみたいと思うようになり、思い切ってイタリアに渡りました。そこで暮らしていくために、語学学校へは毎日真面目に通いましたね」
『やろうと思ったら、とことん』を発揮し、語学を学ぶことが楽しくなっていった。
上達も早く、次は大学でドイツ語や英語を学び翻訳の仕事をしていこうかと考えていた時、アルバイトで、レストランの仕事を経験したことが、料理の道に進むきっかけになった。
「1年間、朝から晩まで語学を学び、それがベースとなって道が開けたと思います。生活を成り立たせるために始めたアルバイトでしたが、語学よりもずっと自分を表現することができると思いました。友人にも恵まれ、人の助けを借りながら、この道を行こうと決め、夢中でした。自分でも良く踏み出したなと思っています」
イタリア滞在に期限を付けていた安藤さんは、レストランでの仕事を覚え、3ケ月後には、正式にスタッフとして雇われることになった。その後、31歳から7年間は、イタリア各地で料理を学んだ。
「イタリアでは、料理の経験や基礎があるなしに関わらず、その店で何ができるかで仕事をしていくものでした。そのため、そこで自分にできることを身に付けたら、次は別の店で、別の仕事を身に付け、転々としながら自分の技術を習得していくのです。私も昔から料理ができたわけではありません。ただ人より器用なところがあったので、段階を追って身に付けていくのが合っていたのだと思います」

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エントランスの写真は安藤さんがイタリアに居た頃のもの。どんな仲間とどんな店で働いていたのかが伺える。

両親の畑から、自分の台所へ、それが楽しい。

「イタリア各地で料理をしていた7年もあっという間の時間でした。次第に自分がいいと思う皿、美しいと思う皿をお出ししたいと思うようになりました。そう思いながらも、店で料理をすることは、オーナーが『よし』と言わなければできません。これからどう生きていくのかを考えたとき、自分で店を持つことに決めました」
安藤さんは、自分がつくる料理のことを「自分の皿」という。
帰国する度に見ていた、安藤さんのご両親が育てる畑もまたそれを後押しした。
「帰国する度目にしていた、両親の畑が見事だったんです。父も器用な人で、どこかに売るわけではない、自分たち家族やご近所に配るための野菜を手の込んだ育て方で作っていました。この野菜が自分の台所にも来て欲しい、ここで料理して、だれかに食べてもらえたら、それは楽しい。そう思いました」
キッチン裏で、パスタを作る様子を見せてもらった。
手早くあっという間に、細やかなかたちが手の中で作られていく。
「ここでパスタを作っているときが、心落ちつく時。自分の得意分野です。パスタには、把握できないほどの種類があります。その中でも一番学びたいと思ったのがこのパスタです」
「日本でもこのパスタを作れるのは自分を含めて数人です」そう言って、手の中にできたパスタを見せてくれた。
目にもうれしい細やかなかたちの理由は、口に入れたときに、よくわかった。
ソースとの相性が良く、はっとするおいしさだった。

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安藤好則さん。「休みの日は何をしようかと、土曜日が待ち遠しい子どもでしたが、大人になっても変わりませんね。いつも夢中になって、朝起きたらあれをやって、これをやってといきいきと生きたいです」

これから、この店で、どんな皿に会えるだろうか。
キッチンで仕事をする安藤さんの手元をのぞきこみながら、この料理はどの地域で、どうやって生まれたのか、そんなことを尋ねながら、料理を待つ時間もうれしい。
「イタリア料理は、郷土料理のかたまりですからね。向こうでの経験を、今の自分と、ここの旬に合わせて、濃い、自分の皿を作ろうと思います」

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キッチンでの料理はもちろん、店の隅々まで見渡して楽しい、安藤さんの手仕事があります。
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Ristorante La Bottega リストランテ ラ・ボッテーガ
〒962-0013 福島県須賀川市岡東町149
0248-61-2916
18:00~22:00
毎週月曜日
あり
https://labottega-fukushima.com/

2021.11.24取材
文:yanai 写真:BUN


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