100年ふくしま。

vol.036 そば処竹林 秦俊輔さん

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100-FUKUSHIMA Vol.036

そば処 竹林 秦俊輔さん

続けることが恩返し

三春町の細い県道沿い、大滝根川のせせらぎが聞こえ、竹林の中にその店があります。
「半分は道楽なんです。でも、店を続けることは、これまでの恩返しだと思っています」
古民家を改装した、趣ある佇まいのそば処竹林。
店主の秦俊輔さんは、38年の高校教員生活を経て、そば打ちを始め、三春町に店を構えました。
きっかけは、喜多方市山都町の耶麻農業高校の教え子との同窓会。その中に、そば打ちの名人になった教え子がいたことでした。
「学生の頃はやんちゃだった子が、今、そば打ちをしていると聞き、自分も教えてもらうことになったのです」
もともと、退職後は麺の店をやりたいと考えていた秦さんは、喜多方市でそば打ちの修行を始め、催事やイベントでの出店を手伝いながら、自身の店を持つことを考え始めます。
「人との出会いには、いつも恵まれてきたと思います。教員時代はバレーボールの指導に明け暮れ、いい生徒と親御さんにも恵まれ、県のタイトルを獲ることができたましたから」
その後、地元である郡山に帰ってきた秦さんは、教員時代から付き合いのあった工務店の知り合いの方から、近くでそば屋を開かないかと声をかけられました。
「川と竹林、90年近い農家の跡地、ここがいいんじゃないかと言うので、その知人にリフォームもお願いすることにしました。いろんな人の巡り合わせがあったと思います。教員時代にお世話になった方々に、なんらかの形で恩返しをしたかったので、店を出してよかったです」

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竹林の味、かえしと会津のかおり

そば処竹林が開店したのは、2006年のことです。
「開店当時は、そば打ちの修行をしていた山都町のそば屋の厨房の手伝いをしていたおばちゃんがわざわざ来てくれ、かえしやそばのゆで具合を見てくれていました。次第におばちゃんに『良くなってきたよ』と言われ、味が決まっていきました」
竹林のそばづくりを見てくれたのは、山都町の農家でもあった高橋さん。仕出しの仕事もしていたこともあり、いつも、「なにかあれば電話してきて」と秦さんのもとに駆けつけてくれました。秦さんは、高橋さんを通じて、同じく山都町で日本一のそば農家である鈴木勝さんの「会津のかおり」を譲り受けることになりました。
「会津のかおり」は福島県が5年がかりで開発したオリジナルの品種。2008年に一般栽培が始まり、その名の通り、香り高くのどごしの良さが特徴です。
「それまでも県内のそば粉を試して、そばを打ちましたが、鈴木さんのそば粉が一番です。鈴木さんにも『好きなだけ打ってください』と声をかけてもらい、この粉がなかったら、続けてこられなかっただろうと思います」
竹林のかえしは一年寝かせ、そばは、会津のかおり100%のそば粉で作られています。
香りとのどごしの良い、さまざまな巡り合わせでできた、こだわりのそばです。
「もうすぐ新そばの季節です。量は多くはでませんが、寒ざらしが一番美味しいですよ」
竹林では10月から5月上旬まで、会津のかおりの新そばが味わえます。

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こだわりの鰹節・梅肉と一緒にそばが楽しめる、ぶっかけそば 1,500円

ここで過ごす時間

そばを打つようになって、苦労は特に感じていません、と秦さんは穏やかな笑顔で答えました。
「郡山の自宅から、毎朝4時には店に来て、そばを打つ。そばはデリケートなので、クーラーは使いません。そばを扱っている間に乾燥してしまいますから。暑い日なら朝早く来て、打った方がいい」
秦さんにとって、美味しいそばは、香りとのどごしが良くコシが強いこと。十割ではなかなか難しいと話します。
この日、私たちスタッフは高遠そばを頂きました。辛みがあるものと思っていた高遠そばに、こんなにもうまみと甘さを感じたのは初めてのことでした。
「桧原の高原大根を使用しています。これがおいしいです。その大根も、以前からお世話になっているご夫妻が作っている間違いのない大根です。おろすと水分量が違うので、その違いが一番良くわかります。圧力鍋でつくる豚の角煮に、大根を入れると絶品です。祝いの席なんかでもよく作るんですよ」
秦さんは、今でも、教員時代の後輩の永年勤続や定年退職のお祝いをここで開くといいます。
そしてここでは、気分転換になるよう過ごして欲しいと話します。
開店から14年、かつての教え子が家族を連れて来たり、地元の知り合いが遠方の知り合いを呼んで、お客さんが集まり、お店は続いてきました。
「あと何年できるかわかりませんから、これからもこのまま、自分のペースで続けて行くだけだと思います」
店を継ぎたいという教え子や店を売って欲しいというひともいました。そのときが来たときには譲ろう。
自分がだめな時はだめで、すっぱりやめよう、そう潔く決めています。

「先週、昔バレーボールで優勝したときの教え子が、埼玉からわざわざそばを食べに来てくれてね、久しぶりに会って、元気だったから良かった」
最後にそう言って、やさしい笑顔をのぞかせました。

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そば処 竹林
〒963-7723 福島県田村郡三春町斎藤仁井道165
024-941-3805
11:30〜14:00・17:00からはお電話ください。
毎週火・水、そのほか不定休あり 1月〜3月中旬まで冬期休業
あり
http://www.miru.co.jp/chikurin/

2018.09.07取材
文:yanai 写真:BUN、watanabe


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