100年ふくしま。

vol.023 諏訪の森Cafe 阿部純一さん

諏訪の森Cafe

100-FUKUSHIMA Vol.023

諏訪の森Cafe 阿部純一さん

一家で始めた米農家の6次化

風の強い平日のお昼。郡山から西会津まで長めのドライブ。
細い道を辿った先に、白抜きの文字で「coffee」と書かれた赤いのぼり。その奥の煙突の白い家が諏訪の森Cafeだ。
「遠いところ、ごくろうさま」諏訪の森Cafe、オーナーの阿部純一さんが迎えてくれた。
ランチのオニオンスープが、冷えた体にあたたかい。思わずおかわりをお願いしてしまった。

諏訪の森Cafe01

西会津町にある諏訪の森Cafeは、米農家でもあるご主人の阿部純一さん、奥様のひとみさん、娘の夢子さんご一家が、自宅ガレージを改装して、2年前にオープンさせた。
朝4時〜8時に農作業、その後店の準備をして10時に開店。夏はお客さんの出入りがまばらになる夕方〜19時くらいまで草刈りを行う。一年で本当に休みがあるのは1日、2日。
それでも、にこにことお客さんに声をかける阿部さんからは、充実した日々がうかがえる。
阿部さんがお父様の跡を継いで、ご実家のある西会津町で農業を始めたのは、今から9年前の50歳の時。
その後、震災の風評被害による減収を補うため、米農家として6次化と自分たちが本当に美味しいと思うものを提供しよう、そして日中でかける場所が限られる町の若いお母さんたちが集える場所になれればと、店づくりが始まった。
「ずっと店をやってみたいと思いながらも、周りからはこの町では難しいよと言われていました。主人が店をやろうと言ったとき、これはチャンスだと思いましたね」
と奥様のひとみさん。
「メニューや店の案内を娘が考え、妻は仕入れと下準備、そこから私はお客さんを迎えて料理をする。店づくりは、これまでの私の経験が詰まっています」

諏訪の森Cafe02
地元産そば粉を使ったガレット。生地を焼くプレートは、通常よりも2倍厚い20mmのため、熱量も大きく安定した焼き上がり。
もとは娘の夢子さんが小学生の時にクレープを焼くために誂えたもので、開店を機に再びキッチンで活躍している。

料理は溶接と一緒

阿部さんは高校卒業後、国鉄の準職員として長野県小諸市にある現在のJRバスの車掌として勤務。霧ヶ峰、白樺湖、上諏訪、高峰高原などで仕事をしていたことで、軽井沢周辺が遊び場になった。
「あの頃の軽井沢には、毎年ジョン・レノンが家族で遊びに来ていましたね。私もすれ違うことがありました。毎年来ていることを知っている地元の人は、特別扱いせず公平に振る舞い、ゆったりとした建物や自然環境の中で、私もそうした感覚を身につけていきました」
その後、正職員として地元に戻り駅員として15年間働いた後、電車の車両をつくる工場で溶接に携わった。
「料理も溶接と一緒で火加減なんです。駅員時代は泊まりで務めていたので、食事は当番制でした。炊飯器から冷蔵庫まで全部が揃っている台所があり、昔からやっていたことで苦もなく身についていました。今は業務用のレンジを使用していますが、それは溶接をやっているのと同じ感覚なんです。温度は違っても熱のかけ方は一緒だと気づきましたね。かけ過ぎれば溶けるし、かけなさ過ぎだと生になってしまう。ちょうどいいところってあるんですよ。その感じがそっくりです」
料理は溶接と一緒、という言葉に私たちは感嘆の声を上げてしまった。
店名の「諏訪の森」は、近所にある諏訪神社から。そして軽井沢で「〜の森」という名前が多かったこと、実際にあったホテルの名前を組み合わせてつけられた。
「ここにもカラマツ、モミノキ、モミジと軽井沢にある木を植えています。やっぱりあの雰囲気が落ち着いて安心するんです。もっと木々を増やしたいと思っています」
店の佇まいは、阿部さんが昔から見てきた心落ち着く風景だ。

諏訪の森Cafe03
今も年に1回は軽井沢を訪れるという阿部純一さん。「行って帰ってきても、家も同じで落ち着くなあと思うんです。北関越自動車道ではなく、私はいつも新潟経由で5時間かけて行きます。でないと行った気分にならないんです」
諏訪の森Cafe04
自家栽培のお米と地元産のそば粉。ふっくらと握られたおにぎりは、つややかに粒が立ち、ほのかな塩加減が美味しい。

西会津町を思う

 お子様連れのお客様、お子様が汚したり、こぼしたりするのを決して叱らないであげてください。
 私たちがお世話をさせていただきます。カフェに来たときくらい、ごゆっくりなさってくださいね。

ぐっときてしまったのは、メニューの1ページ目だった。
この文章を書いたのは、娘の夢子さん。キッチンに立ち、てきぱきとお料理を運ぶ姿が印象的だ。
「焼き肉屋さんのトイレにあった張り紙に、感動したんです。私も書こうって思いました」
町の中で出掛ける場所が少ないこともあり、日々忙しくしている子育て中の若いお母さんたちに来てもらいたいと話す。
「ここではママ友会もよく開いていますよ。ベビーカーを押して来る方もいて、子ども連れでも大丈夫。バリアフリーなので施設にいる車いすのおばあちゃんとここで会うということもできます。1日のうちで一息つくような時間に使ってほしいです」
西会津町では、この数年の間に3軒の飲食店がオープンした。
民間に活力があることは町にとって頼もしいことだとその日、同じ時間にカフェを訪れていたお客さんが教えてくれた。
阿部さん、ひとみさん、夢子さんはそれぞれに町のことを思う。
町に必要なことはなんなのか。自分たちはこれからどうやってこの町に貢献していけるのか。
「今はFacebookなどインターネットで、個人同士がつながれるようになり、よいものはよいと認め合うことができますね。都市部と地方の差というものもなくなってきているように思います。組織やグループに頼らなくて良くなった分、本当に必要になってくるのは、物事に対するひとりひとりの思いや情熱なんだと思います」

諏訪の森Cafe05諏訪の森Cafe06

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諏訪の森Cafe
〒969-4406西会津町野沢字祝ノ前甲1402-1
0241-45-3713
10:00〜19:00
毎週火曜日
あり
https://www.facebook.com/na.suwanomori.cafe/

2017.11.09 取材 文:yanai 写真:BUN


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