100年ふくしま。

vol.009 うっちゃんの倉庫

Vol009 うっちゃんの倉庫

100-FUKUSHIMA Vol.009

蕎麦とピザの店 うっちゃんの倉庫
内村正則さん、とも子さん

第二の人生をどう過ごそう

定年退職後の人生をどうするべきかを考えていた内村正則さん、とも子さんご夫妻。
兼業農家で、高校で英語の教師をしていた内村さんが定年退職後に始めたのは、蕎麦とピザの店。
もともと野菜を保存するために作った倉庫に、石窯と蕎麦打ちスペース、キッチンを設け、お店にした。
それが、「うっちゃんの倉庫」の由来。
はつらつとしたお二人の一週間は、それはそれは充実している。
店の営業は土、日、月の3日間、あとの3日は農業、1日は趣味の時間。
「身体を動かして季節の野菜をつくり、店では人に会って、残りの一日は自分の時間。このバランスがよいのです」
なにかやりたいと思う度に、新しいことを学んで身につける、それが続いてきた日々だ。

マルゲリータ
内村さんが手早く作って焼き上げたのは、甘いトマトと北海道産チーズたっぷりのマルゲリータ

うっちゃんの倉庫

須賀川市吉美根で蕎麦とピザの店「うっちゃんの倉庫」を営む、内村正則さんと奥様のとも子さんは、揃いのバンダナ、エプロン姿で店のキッチンを動き回る。
「10年以上、趣味で蕎麦打ちをして、ご近所に振る舞っていたこともあり、自宅に蕎麦を打てる場所があったらいいと思っていました。そのうち、女房もピザ窯を作ったら、ご近所の人や子どもたちも呼んで遊べるんじゃないかなと話すようになり、現在のかたちになりました」
定年退職後、毎日楽しくなるようなことを始めようと内村さんは調理の専門学校に入学、一年後に調理師免許と食育インストラクターの資格を取得。
知り合いであった、石窯作りの経験者に会津から来てもらい、内村さんも一から学びながら倉庫に石窯を作った。
蕎麦打ちと手作りピザ。めずらしいと言われるこの組合せは、内村さんがご近所や子どもたちにご自身で振る舞える料理だったという。
「ピザは、食育に適した料理です。自分で作った野菜も使えます。子どもたちとピザ作りをするときは、各自好きなように思い思いのトッピングでミニピザを作ってもらうんですよ。煙が良質なタンパク質に形成していくので、チーズたっぷりのピザは石窯で焼くといいんです」
お料理は、内村さんが趣味の陶芸教室で作った器に出してくれる。
「焼き物が上手い人は蕎麦打ちも上手いなんて言いますね。こねて伸ばして、焼く。ピザもいっしょです」と笑う。
うっちゃんの倉庫には、お二人がこれまでやってきた楽しいこと、好きなこと、そして大切なことが詰まっている。

手打ち蕎麦

薪を得るには、チェーンソーの扱い方を知らなければ

お店をオープンしてこの春で八年目。石窯はすでに3代目になっている。
テレビで紹介されてからは、県外からのお客様も訪れるようになった。
「店を始めてからが楽しく、変化の絶えない日々です。店を通じて各地に友だちができました。」
内村さんが焼いた器を店に飾るために、友人が棚を作って持ってきてくれたという。
震災を経験したことも、変化のうちのひとつだと話す。
「震災直後は石窯が壊れてしまい、もう辞めてしまおうかと思っていました。そのうち、お客さんからまだ店は開かないのかと言われ、ここには野菜もある、火が使える、またみんなで集まれる、そう思って、石窯を造り直しました」
それから、わずか一ヶ月後の余震で2代目の石窯が壊れてしまったが、再び造り直して現在の3代目を完成させた。
「お客さんのああ、おいしかったの一言が、なににも代えがたいのです」
内村さんは安全であることに、特に気を使う。
窯で使う薪は、線量の低い矢吹町の材木。ピザチーズは北海道産。香りの良いそば粉は湖南町の農家さんに依頼している。
「薪がほしいと思ったら、自分で木を切ってみたいと思うようになって。その木を切るには、まずはチェーンソーの扱い方を知らなければならなかったんです」

農家が集う場所をつくる

「農家が再生するには、農家が自ら人の集まる場所を作れば、いろんなことが変わっていくと思うんです。その良い見本になりたいと思いました」
たとえば親世代が野菜を作り、その野菜をおいしく料理して振る舞える子ども世代がいれば、人が集まる、農業の再生につながっていく。
そう考えていた内村さんは、今「うっちゃんの倉庫」でそれを見せてくれた。
お二人の健康の秘訣は、毎日よく働くこと。
私にはまだ少し先の「第二の人生」が、わくわくとしたものに思えてくる。

うっちゃんの倉庫では年間約50種類の野菜を作っており、季節の野菜を天ぷら蕎麦、ピザの両方で楽しめます。
「畑仕事もお店もひとりでは決してできなかった」と笑いあうお二人です。

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蕎麦とピザの店 うっちゃんの倉庫
福島県須賀川市吉美根字土橋61-5
土・日・月 11:00〜16:00
0248-76-5294
http://uchan.cooklog.net/

2017.05.01取材
文:yanai 撮影:BUN


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