100年ふくしま。

vol.065 株式会社MIDORI 吉田達也さん

2021/05/25
065MIDORI

100-FUKUSHIMA Vol.065

株式会社MIDORI 吉田達也さん

小さな書店「みどり書房」から、豊かな暮らしをめざして

今から47年前、郡山市本町で「みどり書房」として創業した、株式会社MIDORI。
社名を有限会社綜合図書、株式会社中央図書、そして現在の株式会社MIDORIとなったのは、2013年のこと。
本社がある、MEDIA PARK MIDORI 桑野店は、書店を中心にエンターテインメント商品から文具雑貨、カフェを展開する福島県内で最大規模の複合大型書店です。
書店の名称は「みどり書房桑野店」という名前ですが、その外観、看板に「みどり書房」の文字はありません。けれど今でもこの店を「みどり書房」と呼ぶ人は多く、昔からある地元の本屋さんとして親しまれています。
株式会社MIDORIは、小さな書店であった頃から、豊かな暮らしを地域に届けながら、魅力的な文化事業の追求を目指し、市内の書店が減少していく中でも、ビデオやDVD、CD、コミックのレンタル、コーヒーチェーン、コンビニエンスストアへの加盟など、時代に応えながら、私たちの暮らしにわくわくすること、ものを届けてきました。
そして、ここ数年では、各分野で培った経験をもとに、新しいスタイルのベーカリー「Bakery いずみがもり」を展開させるなど、MIDORIが考える「豊かな暮らし」を表現することに挑戦しています。

1978年のみどり書房
1978年のみどり書房

MIDORIの文化

みどり書房は、創業者で現会長の中畠慎さんが、働いていた出版物の取次会社から書店経営を薦められたことで、書店を始めることになりました。
当時、わずか15坪の小さな書店であった「みどり書房」の名前は、事実上の経営者であった中畠さんの奥様、美代子さんが名付けました。
「この小さな店がMIDORIの始まりです」
運営支援を行う吉田達也さんが、資料として残されている1978年当時のお店の写真を見せてくれました。間口は小さくも入口のラックには、雑誌がぎっしりと並んでいるのが分かります。
「学生の頃から映画が好きで、TSUTAYAのレンタル部門に配属され、自分も映像作品に携われるということが嬉しかったです。一緒に働くスタッフの仲が良く、人が増えた現在でも、さまざまな問題に対してみんなでカバーしていくという寛容さがあります」
吉田さんは、2006年のMEDIA PARK MIDORI 桑野店のオープン時に入社し、現在、運営支援として社内外でMIDORIを広報、お店が地域コミュニティの役割を担うための働きかけも行っています。
「ネットが普及し始めた頃は、書店にとって脅威になるという見方もありましたが、今は、ネットとどう融合していくかを考えています。ネットでも店舗でも、そこに本の文化があることに変わりありません。ただ店にお客様が足を運んでくれるのなら、購入だけが目的ではない、遊びに来られるような場所になれればと思っています。昔は、本屋を待ち合わせ場所によく使っていましたね。そのぐらい気軽に行ける場所ですから、それは今も、地域に使ってもらえる場所として、本屋の魅力はまだまだあるのだと思います」
ネットの普及による影響を町の書店としてどう感じていたのかという問いに、吉田さんはそう答えました。
「豊かな暮らしを地域に届けるという考えは、私が入社するずっと前、創業の頃からありました。MIDORIは、もともとの根っこの部分で、『コミュニティ』を目指す企業文化があり、そこをもう一度見直すため、この2、3年は力を入れて動き始め、今やっと一歩踏み出せたかなというところです」
吉田さんは入社してから、上司も社長も近くで話しをしながら働けるということが嬉しかったといいます。
年々社員やスタッフがふえても、運営支援室のスタッフは、各部署の責任者やリーダーとのやりとりから、その人たちの考えのもとに店が運営されていることに安心感があると話されました。
「風通しよく、共感、共有、共栄していこう、MIDORIはそれを目指してやってきました。ここで働く人が、気持ちよく楽しいと思ってもらえたら、一番です。組織が大きくなるにつれ、難しくなるかも知れませんが、原点に立ち返ることを運営支援室から伝えていこうと取り組んでいます」

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若い頃よく観ていた映画は、マイケルJフォックスが出演しているもの、バックトゥザフューチャーという吉田達也さん。
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五感で味わう時間

2019年にオープンした「Bakeryいずみがもり」は、メニューから販売するものまで、食に関する生活提案をMIDORI独自の考えで初めてかたちにしたお店です。
店名のいずみがもりは、絵本「からすのパンやさん」の舞台となる町の名前に由来しています。仲間や家族、そのゆたかな世界観を現在の暮らしに投影するように、赤ちゃんからお年寄りまで、喜びのある食とコミュニケーションの基本である言葉を味わう絵本、そして、人とのふれあいが生まれる場所を提供しています。
「これまでは、仕組みが整えられたフランチャイズの販売レンタル、カフェに携わってきました。その経験をもとにした地域コミュニティとなるカフェを作るなら、どんなことができるだろうと、商品開発からすべて自分たちで考え、調べ、今までやってきたことを組み合わせたのが『Bakeryいずみがもり』です。どんなかたちで地域に根ざして貢献できるのかをMIDORIが表現したひとつでもあると思っています」
今まで加盟するカフェで働いていたスタッフは、初めて自分たちで材料を厳選、メニューづくりに取り組み、生産地や製造場所、作り手がわかるように提供することで、食の安心と食べる喜びを伝えています。
2年前から、みどり書房では絵本の売り場を「えほんの森」と名付け、担当スタッフは「もりの案内人」として本の相談や紹介を行っています。物語から言葉にふれることは、子どもだけでなく、大人にも楽しめ、時に胸を打つことがあります。
「昨年のコロナの影響から、家で過ごす方が増えていると思います。そうした方が、ここに来て、居合わせた方やスタッフと言葉を交わすことで、少しでも心和む時間になればと思います。自分たちも生活の中で、オンラインであることが増えていますが、いずみがもりの食事や絵本を楽しむこと、人とのふれあいに、私たちがもともと持っている感覚を刺激してくれる体験があるのだと思います」
見て、触れて、味わう。いずみがもりは、憩いの公園のような役割をもっています。
ここには、ものを買わなくても、絵本を読みに訪れる、コーヒースタンドとしての利用、のんびりとしたひとり時間に、お仕事の打ち合わせなど、訪れたひとの誰もが、思い思いに過ごしてよいというあたたかい時間があります。

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「MIDORIの考えを社内にどうやって浸透させていくのかが、運営支援にとっての課題でもあり楽しみでもあります。ネットの普及も、ものがあれば売れるということも、ここ10年で変わってきました。これから先の環境や自分たちの生活も大きく変わっていくのだと思います。その変化に適応しながら、自分たちが思う『お店として魅力的であること』を求めてきたいと思っています。私個人としては、デジタルネイティブの世代にとって、本屋はどんな立ち位置になって、彼らにとって紙でできた本はどんな存在になっていくのかを考えています。紙の手触り、本を読むという経験も楽しみとしてここを訪れてみてほしいと思います」
MIDORIが長年取り組んできた、豊かな暮らしを地域に届けること。
これまでを振り返り、自分たちの経験をつなげて、MIDORIも地域も気持ちよく、少しずつそのかたちがつくられていきます。

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株式会MIDORI
https://ja-jp.facebook.com/MediaParkMidori/
〒963-8032 福島県郡山市下亀田16-16
024-923-0676

2021.04.27 取材
文:yanai 写真:BUN
写真 2枚目、5枚目 提供:株式会社MIDORI

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