100年ふくしま。

vol.040 ふくしま逢瀬ワイナリー 勝俣麻理さん

2019/02/22

ふくしま逢瀬ワイナリー

100-FUKUSHIMA Vol.040

ふくしま逢瀬ワイナリー 勝俣麻理さん

ふくしま逢瀬ワイナリー

郡山市逢瀬町にある「ふくしま逢瀬ワイナリー」は、製造、販売ができる福島県にとって初めてのワイナリーです。
ワイナリーの運営、PR活動を行う勝俣麻理さんに初めてお会いしたのは、昨年の郡山市主催のツアーでのこと。
ワイン用ぶどうの栽培に取組む橋本農園を訪ねた時、畑に立つ橋本さんと勝俣さんからは、これまで二人三脚のように支え合ってやってきたという関係が感じられました。

ふくしま逢瀬ワイナリーの事業主体である、三菱商事復興支援財団は、東日本大震災後に設立され、福島県、宮城県、岩手県の産業の復活を目指して支援活動を行ってきました。
勝俣さんは、震災後に復興支援チームに所属し、福島で新しい支援活動をするため、ワイナリーのプロジェクトを立ち上げたメンバーの一人です。
「三菱商事復興支援財団では、福島、宮城、岩手で地元の金融機関と一緒に投融資をする、助成金を渡すなどのサポートを行ってきましたが、福島で私たちにできたことは少なかったのです。そこで、福島への支援には、農家の方とともに果樹農業6次産業化プロジェクトをスタートし、地域の農業と結びついたワイナリーで観光の拠点や食の文化を生みだし、地域を発展させる起爆剤となる新しい産業にしていくことを考えました」

逢瀬ワイナリー01

はじまり

福島での新しい取組みを考えていた2014年。
勝俣さんらプロジェクトチームは、話し合いを重ね、福島の復興支援は農業でやりたいと、次第に「ワイナリーをつくること」へつながっていきました。
「その年の春、郡山市と話をした際、担当の方から、『自分だったらこうしてみたい』という提案や地元にはこんな農家や酒蔵があるのだと教えてくれ、その熱意にどんどん引き込まれていきました」
勝俣さんは、郡山市にワイナリーをつくることができたのは、そうした人たちとの縁だったといいます。
農家の方へのワイン用ぶどうの栽培のお願いには、当初、東京から出張し、1日に数軒訪ねていましたが、それだけの時間では気持ちまで伝えることができず、その後は1日1軒と決めて、互いの理解を深めるようにしていきました。
「農家の方には、にわかに信じがたい話だったと思います。東京から突然やってきた私たちの構想段階の話に長い時間耳を傾け、協力に快諾してくださった農家さんには、頭が下がるばかりです。やがて、メンバー全員が郡山に引越し、暮らし始めたことで自分たちの本気を伝えたいと思いました。この地域に今までになかったワイナリーで、新しい農業の新しい産業をつくりたい。そう何度も伝えていくうちに、『なにかを興す時には、リスクはあるけれど、誰かがやらないと波は起きないから』と協力が得られることになりました」
郡山で暮らし始めたメンバーは9名。おかげでこの地域の生活や気候がわかるようになったといいます。初めに協力を得られた農家は4軒、現在は13軒にまで広がりました。
「誰もやってないことを始めるのは、こわいことだと思います。初めの4軒の農家さんがワイン用ぶどうを栽培してくれたおかげで、他の農家さんも栽培方法を知ることができ、今の体制が出来たと思っています」
2015年10月にワイナリーの建物が完成し、ワイン用ぶどうの栽培を開始。翌年の2016年3月にはシードルとスパークリングワインを発売。震災から5年目を節目に、福島から新しい動きが始まっているという明るい話題を提供したいと考えました。

逢瀬ワイナリー02
昨年の生産者を訪ねるツアーにて、郡山市職員の方々と中央右:勝俣さん、中央左:橋本さん。

逢瀬ワイナリー

ワイナリーを育てる

「ワイナリーを始めるには、多くの認可やそれに伴う膨大な手続きと要件があります。そうしたスタートアップは全て財団が行い、きちんと採算がとれ、自走できるようになった時、地元の運営事業としていくのが、私たちが考える復興支援の目標です」
スタッフも地元の方でまかない、これからワイナリーや醸造をやってみたいという方にも門戸を開いています。
「1軒だけでなく、山梨や長野のように小さなワイナリーがいくつもあることで、観光や食との相乗効果により、さらに発展していく可能性があります。そんな意味もあり、このワイナリーを復興のモデル事業にしたいのです」
ワイナリーには農家の勉強用として畑やセミナー室があり、ワイン用ぶどうの栽培を学ぶことができます。勝俣さんもまたそこでワイン造りを学んできました。
「作業を見ていて、本当に大変だと思います。ぶどうの収穫には3年がかかり、出来るまでに収入が得られないのです。だから、そこまでして協力してくれたことに感謝しています」
ワイン用のぶどうが育つまでは、桃・梨・りんごのお酒を中心に生産を行ってきました。
2015年に栽培が始まったワイン用ぶどうは、2018年秋に収穫。
2019年、今年の春、いよいよ福島産のワインが登場します。

逢瀬ワイナリー04
「ようやくワイン用ぶどうが採れてワインが出来る、初めての年。ワイン造りは息の長いプロジェクトだと思うので、今年がスタートだと思っています。」

今が楽しくてしょうがない

「今が楽しくてしょうがないです。ワイナリーができたことで、地域のイベント会場になり、学生が卒論のテーマに選んでくれたり、レストランの方が食との組み合わせを考え、ツアー会社では観光プランに入れてくれたり、様々な点がつながっていくのを感じています」
勝俣さんは以前、石炭の営業を担当し、東北の電力会社がお客様でした。
「東北の方々は、本当にあたたかく優しいなと心に残っていて、自分にも合っていたのだと思います。発電所の仕事や自分が扱う石炭がどう使われているのかを教えてもらい、仕事の楽しさを教えてくれた地域でもあります。震災があり、自分が担当していた発電所の光景に驚き、自分がこれまでしてもらった分、なにかできることで返していきたいと思いました」
それは勝俣さんが、復興支援のチームメンバーに入った経緯でもあります。
「商事会社らしいサポートの仕方があるはずと、メンバーと一緒に考えていました。新しい事業を興すなど、次第にこの活動へのおもしろさに気づいていきました。郡山は、農家や飲食店、市に関わる人たちの考えも、自由に新しいことがやりやすい地域だと思います。みなさん、あたたかく、優しいですね。新しいことを受け入れ、仲間にしてくれる、そんなことを感じています」

逢瀬ワイナリー05

駅前の三松会館が好きだと話してくれた勝俣さん、郡山での暮らしを楽しんでいることが私たちには嬉しいことです。
帰りに、シードルの試飲をさせて頂きました。
「毎年、色や香り、味の深みもその年にできたりんごによって異なるんです。面白いですよね」
そう教えてくれた来客エリアのスタッフは郡山のご出身。ワイナリーのスタッフになったことで、県内の果物やお酒について勉強したのだといいます。
すっきりと、りんごの甘みを喉のあたりで感じる2017年のシードル。
お酒が得意でないにも関わらず、こくこくと飲んでしまう。
美味しい、そしてやっぱり嬉しくなってしまう味です。

逢瀬ワイナリー07
東京以外で暮らすのは今回が初めてという、東京生まれ東京育ちの勝俣麻理さん。
「郡山で暮らし始めたことで、自分の中ではふるさとができた感じです。すごく好きな場所です」

– – –
ふくしま逢瀬ワイナリー
〒963-0213 郡山市逢瀬町多田野字郷士郷士2番地
0120-320307
火曜日〜日曜日 10:00~16:00
*1月~3月は水曜日・土曜日のみ冬期営業

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2019.01.23取材 文:yanai 写真:BUN

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