100年ふくしま。

vol.055 サクソフォン奏者 芳賀大峰さん

055 サクソフォン奏者 芳賀大峰さん

100-FUKUSHIMA Vol.055

サクソフォン奏者 芳賀大峰さん

真新しい教室で

この春、オープンしたばかりの真新しい音楽教室。
サクソフォン奏者の芳賀大峰(はがひろたか)さんが私たちの目の前で演奏を始めた。
胸部が大きく膨らみ、のどまわりに力が込められる。

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「演奏家として目指したいのは、自分にうそをつかずに、自分のスタイルを構築してそれを表現していくこと」と、芳賀大峰さん。
サクソフォンは、ベルギーの楽器製作家アドルフ・サックスによって1840年代に考案されました。
金属製ですが、構造や発音原理から木管楽器に分類され、当時盛んであった軍楽隊の中で使用されていました。

サクソフォン奏者として活動しながら、音楽教室Music Academy SENZOを主宰する芳賀大峰さんは、中学卒業後、東京藝大学附属高校から洗足学園音楽大学へ進学し、スイス留学を経て、3年前に郡山に帰郷した。
「音楽の教員をしている母の部活について行ったとき、いろんな楽器の中で、サクソフォンがとりわけ格好良かったんです」
それは、芳賀さんが小学生の時。その後、様々なコンサートに行き、音楽の魅力に引き込まれていった。
「サックスは、管楽器の中でも音を出すのが簡単な方です。他の楽器と比べて比較的新しい楽器なので、扱いやすく吹きやすく作られているのです。そんなサックスが持つ高い能力を常に開拓し続け、優しい音色も派手な音色も出せる、サックスを使いこなすことで、音楽の魅力を伝えていきたいと思っています」
昨年開催したクリスマスコンサートでは、ヴィヴァルディの「四季」などクラシック曲を自身で編曲し、サックスとピアノの音色で聴かせるという試みを行った。
「このコンサートのテーマはクラシック。私が敬愛するクラシックの名曲の素晴らしさを損ねないよう、全てのプログラムを慎重にサックス用に編曲し、純粋に音を楽しんで頂きたいという思いで演奏しました」

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自由を知るために

「留学を決めた理由は、音楽のためというよりも、自分が知らないことを知りに行きたかったからです」
『音楽をやるなら海外へ行かないとだめだ』という風潮への抵抗から、初めは海外留学の必要性を感じていなかった芳賀さんは、ある日本の先生に、『もっと自由に演奏するために自由とは何かを知りなさい』と言われ、気づかされた。
「日本にもいい演奏家がたくさんいるし、海外から戻った方もいるので、その方々から学べば十分だと思っていましたが、そこには、自分の中でなにか見て見ぬふりをしている感じがありました。自分にはまだ知らないことがあるんじゃないか、外の世界に行けば、それがわかるかも知れないと思いました。それから留学して、ヨーロッパの暮らしや文化を肌で感じました。スーパーや学校といった場所で、クラシックを含めたあらゆるジャンルの音楽を耳にするのは日常的なことで、あそこで聴いた演奏家の音楽を聴きに行こうと、演奏会に足を運ぶ学生がいるのもめずらしいことではありませんでした。そうした音楽が生活の中に溢れ、豊かな環境の中で、自分の中に音楽と関わる上での軸となるものができていきました」
留学後、音楽の仕事があり仲間がいるスイスや東京にいるという選択肢もあったが、芳賀さんは郡山に帰ることを決めた。
「自分の生活の中で穏やかに音楽が存在していることに、幸せを感じられるようになっていたので、真っ直ぐここに帰ってきました」
これからスイスか東京で音楽の仕事をしていくのだろうと思っていた奥様は驚いたという。
「はじめはとても驚きましたが、話しを聞いて郡山に拠点を置くということに納得しました。ただ彼にとって本当にやりたいことをやるにはここがぴったりの場所だったのです。自然豊かで周りも温かい人ばかりですし、心を落ち着けて彼らしい音楽をするのにとてもよいところです。今は芳賀大峰の音楽を求めて応援して下さる方々に感謝し、誠意を持って活動していけたらという思いです」
芳賀さんの奥様で、現在同じくMusic Academy SENZOでサクソフォン講師を務めている美咲さんはそう理解する。

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「音楽の高校があることを知ることができたのは、秀徳さんのおかげ」
郡山市出身のトランペット奏者、佐藤秀徳さん と親交があり、一緒に演奏することも。
芳賀さんが高校受験のためにピアノを教わったのは、佐藤さんのお母様からでした。

音楽はいつも生活の中に

「生活があって、音楽があるんです」
お話を伺ったのは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が解除されたばかりの6月上旬。
音楽教室もこの春はお休みになり、新しい教室を整える準備期間だった。
「今年も、演奏会をやろうと思えば出来ると思います。けれど、聴きに来て下さる方も演奏者側も人との距離を気にしながらの開催というのは、私はなんだか悔しいので、もっと別のアプローチでなにか出来ないかなと考えています。今年は教室の発表会もできなくなったので、生徒さんの演奏を録音してCDを作ろうと思っています。みんなの演奏を集めてつくるCDは、思い出に残るんじゃないかな。発表会は一発勝負の本番のみですが、録り直すのも、生徒さんにとっていい経験になると思っています」
昨年は多くの演奏会を企画し、三ヶ月に一度のペースで開催。コンセプトを考え、曲選び、編曲、プログラム作成、宣伝活動、そして練習と忙しくしていた。
コンセプトの基本はいつも、「リラックスしながら、感性を研ぎ澄ませて、音楽を楽しんでほしい」ということ。

これまで開催してきた演奏会のフライヤーを見せていただいた。
聴く側も演奏する側も、リラックスして楽しむ演奏会や、静かな環境で音だけに集中できるようなクラシカルな演奏会。
カフェでの演奏会は、お食事やお酒を楽しめるのが気持ちいい。
那須白河フォレストスプリングスのロッジでのナイトライブでは、即興音楽劇を行った。
「ご依頼があればどこにでも行きます。頼まれてビートルズや演歌を演奏することもあります。留学をするまでの私は、クラシック以外はほとんど演奏しなかったけれど、今じゃ本気で北島三郎さんの祭りも吹きます」
話を伺いながら、みんなで笑ってしまった。
芳賀さんは、クラシックもポップスも今まで培ってきたことを総動員して演奏する。スイスで生活の中に音楽が自然に溢れていたように、日本でももっと音楽に親しむ環境をつくりたいという思いが、そうさせる。
「郡山で演奏会を続けて、いいものにはきちんとお金を払いたいとおっしゃる方に多く出会わせていただきました。熱意を持って活動することが、素敵なご縁につながると信じ、今後もそうしたご縁が自然と広がっていけば嬉しいです。音楽の仕事をつくりたいというのも、郡山に帰ってきた理由の一つです。音楽を学びに県外へ出て、戻って来る人が少ないのは、ここに音楽の仕事が少ないからです。音楽には地域の環境や理解者が不可欠です。これからも郡山に豊かな音楽が続いていくように、私たちにはやらなければならないことがたくさんあります。今できることから一歩一歩進めていこうと思います」

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芳賀大峰 Haga Hirotaka
https://hirotaka-haga.com
mail[at]hirotaka-haga.com [at] –> @

1988年生まれ、郡山市出身。
東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、洗足学園音楽大学を卒業。
ルツェルン音楽大学大学院(スイス)にて修士課程ソロパフォーマンスディプロムを取得。
現在、郡山市を拠点に、音楽文化振興を目的とした事業「Music Academy SENZO(ミュージックアカデミーセンゾ)」を主宰、演奏家兼サクソフォン、ピアノ講師として活動中。

Music Academy SENZO
並木教室 〒963-8026郡山市並木1-9-11
 大槻教室 〒963-0201 郡山市大槻町字中野38-1
024-952-4467

2020.06.08 / 07.10 取材 文:yanai 写真:BUN


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