100年ふくしま。

vol.027 SPOOL 真壁崇さん

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100-FUKUSHIMA Vol.027

SPOOL 真壁崇さん

帰りたいところ、落ちつく場所

私は子どもの頃、近所の床屋さんに行くのが楽しみだった。
白衣を身につけた床屋のおじさんに、髪を切ってもらうのが好きだった。
鏡の前の椅子に座り、肩からすっぽりと布をかけてもらうと安心した。
髪を触られるのは気持ちがいい。
クシで髪をすき、耳もとでハサミがしゃくしゃくと音をたてる。そのリズミカルな調子が大好きだった。
おじさんは植物が好きで、庭に咲く花や野草をあちこちに置いていた。
草花が目の前の大きな鏡に写りこむ。鏡に写し出された風景に胸がときめいた。
すっかり短くなった髪の自分は少しだけお姉ちゃんになったようで嬉しかった。
おじさんは手品師か魔法使いか、本気でそう思った。
今でも髪のことに携わる人へは、憧れにも似た尊敬の思いを抱く。
新しい年を迎えてまもなくステキな美容室に出合った。
小さな空間で店主がひとりで営業をしている。
光が射す店内にはさまざまな植物が置かれ訪れる人を迎えてくれる。
そのひとつひとつに物言わぬ静かな生命の気配を感じる落ちつく空間だ。
些細な出来事に揺れ動く心を抱えるとき、帰りたいところはこんな場所かもしれない。

vol.027 SPOOL 真壁崇さん

スプールとは「糸巻き」のこと

「SPOOL」は、マンツーマン対応のプライベートヘアサロンだ。
店主の真壁崇さんは、東京代官山の美容室で14年間、お店のナンバー2として美容師をしてきた。
スプールとは「糸巻き」のこと。
「自分が培ってきた美容関係の技術やアドバイスにとどまらず、健康のことや暮らしのヒントを伝えていきたい。そのひとつひとつをお客さま自身の糸巻きに巻くように持ち帰ってほしい。そしてその糸を必要なときに引き出し、紡ぐように使ってほしい」
お店の名前にはそんな思いが込められている。

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肌の弱い自分だからこそ

「美容師は手荒れとの戦いです」
穏やかな目でそう話す真壁さん。小さい頃は、アトピー性皮膚炎がひどかった。
「看護師をしていた母が、水を変えたりいろんなことを試してくれていつの間にか改善しましたが、肌は今も弱いですね」
肌の弱い自分だからこそ同じ悩みを持つお客さまの思いがよくわかる。
美容室で扱う薬剤などには細心の注意を払い、何が良いのか何が悪いのか勉強を怠らない。

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小さい頃になりたかったのは、教師かお医者さん

真壁さんは子どもの頃から自分が出来ることを人のために使う仕事をしたかったという。
「小さい頃になりたかったのは教師かお医者さん。美容師を目指したのは高校生の時でした。深く人と関わる仕事だと確信にも似た思いがありました。目指すのは、美容や暮らしのヒントを教える教師のような、健康のアドバイスも出来るお医者さんのような、そんな美容師です」
故郷の郡山へ戻ってきたのは、父親の病気がきっかけだった。
「生前、闘病中の父が、病気になるとあたりまえに動いていた身体の機能が使えなくなる。病気になり、あらためて気付いたことだと話したことがあります。健康だからこそいつもの生活ができるありがたさを伝えてくれたのだと思います」
この言葉を折に触れ思い出す。普通に身体が動くことのありがたさ、健康でいることの大切さ、普段通りの生活ができることへの感謝の思い。それらは故郷で美容室を始めようと決心した大切なコンセプトに繋がっている。
SPOOLは2018年3月2日で3年目を迎える。美容師という職業を通して人の暮らしに役立つ存在になりたいと願う。

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心惹かれることは、始めてみるのがポリシー

お店では、真壁さんがセレクトした生活用品も販売しています。
「美容全般の商品の他に、例えば自然の素材を使った歯磨きとか手や環境にやさしいキッチン洗剤なども置いています。商品だけの販売もしておりますのでお気軽に声をかけてくださいね」
真壁さんは昨年から古流武術を始めました。
剣術には、細かな身体の使い方ひとつひとつに意味があり、決して力勝負ではない奥深さがあります。
「相手の動きに合わせ実践を想定した竹刀での打ち合いを稽古します。日常生活にも応用できる身体の使い方が身についていくのも魅力ですね。体幹が鍛えられ、バランスがよくなるので肩凝りや腰痛、身体の歪みなどを自然に解消していけます」
古流武術の他に陶芸、登山、カメラなどにも挑戦している真壁さん。心惹かれることは始めてみるのがポリシーです。
「おまえは飽きっぽいと言われます。けれどそれは違う。何かを始めようとする時に長く続けられそうか、という視点では決めません。まずは心が動いたら始めることが大切。どんなことでもやってみなければわからないし、体験すれば得るものは必ずある。やっていてこれは向いていないと感じた時にはやめればいい。どうして向いていないかを考えることが一番大事でそのことが自分を知るということにつながっていくのだと思います」

小さな花ひとつにもそこにある意味を感じる。
植物、その変化から目を離せない。
定期的に花を求め飾り、過ぎていく時の流れの中でドライフラワーとして生命を繫げていく真壁さん。
オープンの時に頂いた植物たちは今も店内に寄り添うように置かれています。

vol.027 SPOOL 真壁崇さん

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SPOOL
〒963-8025 郡山市桑野2-5-1 桑野ビルA
024-901-9374
10:00〜19:00
月曜、第1・第3火曜
あり

2018.02.02取材
文:kame 撮影:watanabe


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