100年ふくしま。

vol.026 なかやま雪月火 加藤浩一さん

vol.026 なかやま雪月火 加藤浩一さん

100-FUKUSHIMA Vol.026

なかやま雪月火(せつげっか)
実行委員会 加藤浩一さん

長靴でざくざくと雪を踏みしめ、ただただ夢中で棚田を登る。
膝まで雪の中に落ちても気にしない。
右手にライター、あのかまくらに自分で火を灯そうと夢中であった。

2月16日金曜日。快晴。
標高660mに位置する下郷町中山地区で、今年で14回目となる「なかやま雪月火」が開催された。
県道131号から会場のなかやま花の郷公園へ続く道とその周辺の棚田に、2000を越える雪の灯籠が等間隔に並ぶ。
この日のためにのべ200名のボランティアが手づくりしたかまくらに、当日、参加者の手でろうそくの火が灯される。
日が落ちる時間が待ち遠しい。夜になれば幻想的な雰囲気が訪れるのだ。

「一度見に来てみてください。冴え冴えとした空気の中で揺らぐろうそくの火が美しく、心から和む時間がありますよ」
昨年お会いし、なかやま雪月火について教えてくれた下郷町商工会の渡部恵子さん。
同じ福島にいながら、あまり雪が積もらない郡山で雪遊びの経験が乏しい自分にとって、なんとも魅力的な言葉だった。
私たちが会場に入った16時すぎ、ちょうど渡部さんが、参加者にライターを配っているところだった。
それから30分後。点火のアナウンスとともに、待ち受けていた参加者たちは嬉々として、一斉に散らばっていった。

vol.026 なかやま雪月火 加藤浩一さん

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きれいでした、が一番

夢中で雪の棚田を登ってしまったと話すと、「童心にかえってしまいますね」とにこやかに返してきた、なかやま雪月火実行委員会会長の加藤浩一さん。
下郷町中山地区のご出身で、現在、南会津町長野郵便局に勤める加藤さんは、このイベントの発起人でもある。
「今から14年前、地区の町おこしとして、この平原にろうそくの火が映えるんじゃないかと考えたのが始まりでした」
ボランティアで実行委員に参加する加藤さんだが、郵便局の業務としても、地域に密着し周辺地域との関わり合いも大きいのだという。
郵便局の郵便局長会では業務として、猪苗代湖の保全、飯盛山の清掃、桧枝岐歌舞伎の登り幕の寄付、震災の時には原町の小学校の泥あげや屋上の清掃も行った先輩もおり、忙しい年末年始には、警察を地区会で慰問することもあり、地域に限らずいろんなかたちで応援していることを教えてくれた。
「地区には19世帯しかなく50人くらいでやっている、素朴なイベントです。これまで夜景遺産に認定もされましたが、見に来られた方からの『きれいでした』という声が一番うれしい」
開催準備から当日も忙しく、主催側が楽しむ時間はほとんどない。
イベントを始めた当初のスタッフは、高齢になり人数も少なくなってきているが、かまくらづくりから点火までを来場者を交えて参加型にしたことや、町の補助金と通年の観光の売上げを運営費に活用し、旅行会社、流通の会社からの応援などで開催を続けている。
観光客が落ち込む冬の開催は、会津の広域的な貢献にもつながっていく。

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自分たちでああしよう、こうしようが楽しい

「どこの地区も過疎が進む中で、こうして会として集まってできることは特異なところかなと思います」
毎年一夜限りで西暦にちなんだ数を灯してきた雪月火。
今年は2日間の開催になり、灯籠の数は延べ4000。準備はお正月過ぎから始められた。
雪の塊からきれいに中を掘り出し、風よけのためにペットボトルで囲った灯籠が中に置かれる。どれも手作業で行われ、加藤さんが感心していたのは、若い人たちの道具づくりだった。
「すごいなと思うのは、よく考えて道具を作れる子がいっぱいいるということ。いろんな大きさのペットボトルをろうそくの高さに切り揃えるのですが、みんなきれいにやっているんです」
中山地区は人数が少ない分、ある程度の年齢になると、みんなが行政に協力地域づくりに参加する。
「ここにいる人はみんなそういう気持ちでいます。例えば、青年会と消防団に入っているメンバーが同じだったり、一人がいろんな会を兼任しているのです。この地区は場所や人数も集まりやすく、条件的に揃っているのかも知れません」
若い人がなにかやろうとすることに、反対はしないと加藤さん。
「それらを実行するために、どうすればマイナス面をカバーできるのかを考えますね。自分たちも若い頃、毎晩よく集会所に集まり、年配の方々に心配されながら、こうしたイベントをやってみて、『お前たちはこういうことがしたかったのか』と理解を示してもらえたことがありました。車だとか、お酒とか、それぞれに楽しさはあると思うんですが、ここでは行事を通して、自分たちでああしよう、こうしようってやるのが楽しいのだと思います。私はどちらかといえば事務的な職業ですが、ここにもいろんな職業の子どもたちがおり、上手く道具を考えて作ってくれ、本当に感心しています」
加藤さんは、いつまでできるのかなと思うという。
「どうしても人が少なくなっていきますからね。この地域に働く場所があれば、若い人たちが来てくれるのかなとも思います。本当にこの地域で頑張ってやっていこうとする人は大歓迎ですね」

vol.026 なかやま雪月火 加藤浩一さん

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日が暮れ、撮影を終えた帰り道。
会場を背にして緩やかな坂を上りながら振り返ると、いくつもの橙の灯り。
見上げれば、いくつもの星。
「これはきっと、空から見てもいい」と横を歩くスタッフが言う。
素朴である。その灯りに充足感でいっぱいになった。

vol.026 なかやま雪月火 加藤浩一さん
周辺はすり鉢状になっており、メイン会場の公園から見渡すロケーションがいい。

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なかやま雪月火(せつげっか)
2018年2月16日(金)、17日(土)
なかやま花の郷公園
〒969-5325 福島県南会津郡下郷町中山下田3

主催:なかやま雪月火実行委員会
お問い合せ先:下郷町観光協会 0241-69-1144
http://shimogo.jp/

2016.02.16 デザインハウス取材
文:yanai 撮影:BUN、watanabe


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