100年ふくしま。

vol.016 アルテマイスター 資材部 山口正広さん

アルテマイスター 山口正広さん

100-FUKUSHIMA Vol.016

アルテマイスター 資材部 山口正広さん

木材の乾燥は、仏壇づくりの要

会津若松市にある仏壇・仏具メーカーのアルテマイスターは、業界でもめずらしい原木の買い付けから、製材、完成までを一貫して行っている。
その資材工場で、山口正広さんは、木材の乾燥に長年携わり、仏壇づくりの要となる作業を担っている。
アルテマイスターが買い付けた原木は、始めに資材工場で製材、用途別に仕分けされ、その後、自然乾燥(4、5年)、人工乾燥(乾燥炉)で、8〜9%の含水率に乾燥した後、外気の湿度と同じくらいに戻すため1〜3ヶ月の養生期を経て、加工を行う本社工場へ運ばれていく。
山口さんが担当する乾燥〜養生期までの作業は、木材の狂いをなくし、後の加工での反りや割れなどの暴れがでないようにするために行われる。ここで確実な作業が行われなければ、次の加工作業に入ることはできない。
山口さんは豪快な笑顔で、ご自身の仕事を「長年の勘と一か八かの賭け」だという。
「乾燥は含水率が下がるまでは頭が痛く、成功すればおもしろい。一週間作業しても変化がないことや予想に反することもあるし、自分の作業が後の工程に影響する、嘘のつけない仕事です。これまで、一つとして同じ条件のない木材を相手に、失敗もしながら自分の考えとやり方を見つけてやってきました」

山口正広さん
山口正広さん。定年退職を迎えた現在も嘱託社員として資材工場で12名の社員とともに、若手の育成と製品づくりを支えている。

終点なく、勉強はつづく

山口さんは、高校卒業後、地元企業のアルテマイスターに入社。3年の営業職を経て、現在の資材工場へ配属された。
資材工場は、職人の集まりだ。
先輩社員に仕事を教わったのは、わずか3年。代わりの者がなく、やるなら徹底的にやってみようと、それからは、自分の考えをもとに膨大な作業データをとりながら木材と向きあってきた。
「原木を買い付けてきた社員が、どこどこで良いのを見つけてきたと報告する。次にその木を製材する社員が、いい目がでたぞと言う。そんな話しを聞きながら、自分のところにその木がまわってきたときには、ものすごいプレッシャーがあります。どんなにいい木でも、乾燥で1度だめにしたらその木は使い物にならず、おわりなのです。だからやりたくないよ」そう言いながらも楽しそうに笑う。
木は生き物、同じ種類でもひとつひとつに個性がある。
見た目が美しく、人気のある欅や栓は、特に個性が強く言うことをきいてくれない。だから上手く材料になってくれたときには『ほら見ろ!やったぞ!』と大声を上げたくなる。
以前、機械任せの「自動乾燥」で、多くの狂いを生じさせてしまったことがある。「木は動くもの」だと言い訳もできるが、それでは済まない。だから、一枚一枚木の変化を見て調整する。その結果、山口さんが乾燥させた木材は、狂いがなく、その先の工程が全く異なるものだったという。
「乾燥はまだまだ未知のところがあり、終点なく勉強しながら、こうしたらどうか、この先はどうなっていくのかと考える。それが楽しいのです」

工場
「配属された当時の資材工場では3、40名の職人が膨大な数を製作し、次の工程の者たちには早くしろとせっつかれ、今やるから待っていろと大声で返しては、みんな言いたいことを言い合う、そんな現場でした」

商品価格への裏付け

一般的に仏壇の販売店では、メーカーから納品された商品は、検品してからお客様へお渡しするが、アルテマイスターの仏壇はそのままお客様のところに持って行くことができる。
「保志さんのところは、間違いがない」
その言葉を聞いたのは、山口さんが営業をしていた1978年の宮城県沖地震のあと、仙台の販売店を訪ねた時のことだった。
「お店に納品される仏壇は既に組み立てられていて、商品をばらすことができない。店はセールスマンが言う事を信用するしかありません。他社のセールスマンが無垢材だから高いと言われていた仏壇が、地震でバラバラになり、合板が使われていることがわかって、店主は愕然としたそうです。その時、お前のところは説明してくれた通りのつくりで間違いない、信用するからと言われ、ちゃんとやっていればお客さんは見てくれるんだと思いましたね」
品質表示がまだなかった頃は、仏壇の公正な取引は難しかった。
そんな時代に真摯に製品を作り、正直に説明していた。
それが今のアルテマイスターにもつながっている。

木材

自信を持っていいものをつくりたい

「子どもの頃から、じいちゃん、ばあちゃんに『まんま食う前に手を合わせろ』そう言われて育って、仏壇の前は心が落ち着くところでしたね」
山口さんは、営業や工場で経験を積むうちに木材と向き合いながら、仏壇をつくっていることを意識するようになり、若い頃は気づかなかった木材の扱い方も丁寧になっていった。
「どんな人でも毎回手を合わせるものだから、自信を持っていいものをつくりたい。ちゃんとしたことをやって、次の人にもそうしていってほしい。生半可なことをすれば必ず木材からしっぺ返しがくる。嘘はつけないし、手は抜けないですよ」
山口さんは仕事の説明をするときに「木を怒らせないように、なだめるように作業をする」といい、「暴れて、しっぺ返しに合う」という。山口さんのプライドと愛着を感じる言葉だ。

自然乾燥

新しいものを生み出す、次の若いひとたちへ

「現在の社長の代になり、伝統的なものから時代に合わせたものを作るようになって、新しいことを吸収するおもしろさがありますね」
アルテマイスターには、新しいものを生み出す技術や要素、そのすべてがある、と山口さんはいう。
「会社として若い人が増え、現在の職人たちが定年退職したあとは、一時的に生産活動は大変になるかも知れません。その人達の技術の伝承やそれを覚えて自分のものにするまでに5〜10年はかかるでしょう。それを克服すれば、またぐんと大きな成長を遂げられる。それだけのものが揃っていますから、おもしろいと思いますよ」
願うのは、これからあとを継ぐ人たちに、腹をくくってきちんとした仕事をしてもらうこと。
「これまでの信用をなくすのは簡単なこと。ただ工場でも若い人達が毎日必死になってやっているのは、私から見ても間違いはなく大丈夫だと思っています。最初は先輩から技術と知識を学び、そこから、自分の考えを持つことで基準ができていくでしょう」
ここからまた、新しい仏壇や祈りのかたちが生まれる。そして、次の若いひとたちが力強く切り拓いていくだろう。

altemaister

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アルテマイスター 株式会社 保志
〒965-0844福島県会津若松市門田町一ノ堰村東40
0242-27-4380/FAX.0242-27-2865
http://www.alte-meister.co.jp/
※工場見学のお申込みを承っております。詳しくはHPをご覧ください。

2017.06.28取材
文:yanai 撮影:BUN


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