100年ふくしま。

vol.075 生活雑貨の店at home. / イラストレーター 星希衣さん

2022/09/30
vol.075 athome / Illustrator Kie Hoshi

100-FUKUSHIMA Vol.075

生活雑貨の店at home. / イラストレーター 星希衣さん

ギャラリー&Zakka みつあみ

アンティークレースのつけ襟。淡い色合いの刺繍が施されたテープ。フランス菓子で見かける小さな陶器の人形。
生活雑貨の店at home.オリエントパーク日和田店にあるショップインショップ「ギャラリー&Zakka みつあみ」には、ものと出会う楽しさがぎゅっと詰まっています。
「自分のフィルターを通して、みんなが欲しいと思うものを仕入れるat home.で、これまで多くのものを見て選びながら、自分が本当にほしいものはなんだろうと考えるようになりました。今の私の感覚に沿って、よいと思うものを選んで、かたちにしたのが『みつあみ』です」
at home.チーフバイヤーで、イラストレーターとしても活動している星希衣さんは、毎月数日だけオープンするみつあみでお客様をお迎えしています。ここには、希衣さんが国内外を問わず、「本当にほしいもの」を求めてセレクトした、洋服や雑貨、アクセサリーが並んでいます。
「みつあみは、at home.よりも私自身が持っている、ものへの愛、慈しみにこだわった商品を揃え、これまでat home.に親しんできたお客様や、これから訪れてみようとするお客様と新たに響き合う試みの場所でもあります。at home では買いやすいもの、みんなに喜ばれるものを選ぶことが多いのですが、みつあみでは、ものが好きな私が辿り着いた、私ならこれがいいと思うものを選んでいます。来ていただいたお客様と、ものを通して交流していきたいと思っています。できたら、お客さまとお店の関係ではなく、個人と個人が出会う場所を目指しています」

athome.
ギャラリー&Zakka みつあみにて、星希衣さん。
「本当に私自身の感覚に近く、好きだと思える商品を選んだ時、それを気に入ってくださるお客様もやはりいらっしゃって、
そうした姿を見つけると自分でもいい仕事をしているなと思います」

キラキラat home.を伝え続けて

希衣さんは、at home.を運営する株式会社あいづ陶苑代表の星定宏さんとの結婚を機に、仕入れの仕事を始めました。
2008年の立ち上げから、みんなが喜ぶことを目指すat home.の姿勢を示し、商品セレクト、イベントディレクションの他、DM制作を担当しています。
「仕入れを始めた頃は『自分が好きなものは、みんなも好き』だと思っていましたが、実際はそうではないということに気づき、お店に来られるお客様の暮らしや好みを想像した商品選びをするようになりました。仕入れのロットが大きい時にはスタッフと相談しながら決めていきます。ものを選択したり、決断するということが得意で、この仕事に向いているところがありました」
気持ちのよい接客が好きだと話す希衣さんは、お客様と向き合う姿勢を大事にしてきました。
「ここで働くようになって、レジに立つだけではなく、お客様になにかを差しあげられるような接客がしたいと思うようになりました。スタッフやお客様との心の面は、at home.が始まったばかりの頃に一番勉強したかもしれません。自分たちの姿勢を『キラキラat home.』という言葉を使って、毎朝スタッフに伝え、十数年続けてきました。今では自分以上に、スタッフの方にしっかり浸透していることを、訪れるお客様の様子からも感じています。ちょっとしたことの積み重ねで、できたら世の中を明るくしたいと思っています。人はちょっとした一言でうれしく思ってくれたり、喜んでくれたりするものですね。お世辞ではなく、自分が本当にいいなと思うことをお伝えすると、その一言で話が弾んで、関係が始まるのだと思います」
例え言葉がつたなくても、良いと思ったことをお客様に伝えることは、心が触れ合える瞬間です。そして、お客様に良いものを届けるために、お客様のことを知るということにもつながっていきます。

075_03
「お店をやっていると本当にいろんな人に会うので、なるべく多くの人に心を開いておくことを心がけてきました。
とはいえ、あまり人付き合いが得意ではないので、自分のやりかたでバランスをとりながら、
その人に向き合うための時と自分と向き合うための時があってよいのだと思っています」
075_04 athome.Office
左:本社のあるat home.オリエントパーク日和田店のバックヤード/右:オフィスのデスクでイラストを描くことも

フランスに行ってみよう

「昨年の夏、思い切って数年ぶりにフランスへ行ってきました。まだ新型コロナの影響もある中、無事に蚤の市で買い付けを終えて帰国した際に、『早く商品が見たい』と周りの喜ぶ声を多くいただいて、本当に行ってよかったと思いました」
現在、みつあみには、昨年フランス買い付けた商品が並んでいます。
希衣さんにとって初めてのフランス旅行は、高校生の時でした。
「フランスに行ってみよう!そう思い立って、バイトでお金を貯めて卒業記念に出かけたのが初めてのフランスでした。蚤の市を巡る旅に出かけるようになったのは10年くらい前。今もお世話になっているアンティークショップの方に教えてもらったのがきっかけです。それから毎年1、2回のペースでフランスの蚤の市を訪れています。行こうと思えばフランスにも行けるとわかってからは、それが楽しみになり、日々の仕事も頑張ろうと思え、一年の生活の中に『フランスに行く』というものができていました」
学生の頃から、フランスの文化やものづくりに共感し、それが今でも続いています。
この日、希衣さんが身につけていたシェルでできた十字架のペンダントも、フランスで見つけたものでした。
今、日本で売られている雑貨たちも、元を辿るとフランスの生活用品をお手本として作られたものも多く、雑貨を扱う上で、実際にフランスに行って、見て、知ることは自分達の仕事で大事なことだと教えてくれました。

075_05 pendant
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2017と2019年のフランス蚤の市での様子

こころとからだが一致するところで
自分とまわりが喜ぶお店と作品へ

お店のDM制作も担当し、長い間イラストを描いていた希衣さんでしたが、身近な人にもそのことを知られていなかったことがきっかけで、3年前にイラスト用のインスタグラムを始めました。
「発表するイラストが好評でお仕事の依頼が来たりするようになり、その時に初めて、今までたくさんフランスを訪れて自分が吸収してきたのは、これだったのだと気づきました」
これまでもいろんな国へ行っていましたが、そこで見て触れたことを自分のものとして表現することができなかったといいます。
「街で見かけたディスプレイをお店でも作ってみようと持ち帰る旦那さんに対し、私はいつも『楽しかった、可愛かった』と思ってばかりでした。イラストの色合いや雰囲気に癒されるといった感想を頂くようになり、それは、今まで私が経験してきたものが蓄積されて表れているのだろうと思いました。それからは、これまでの経験が宝物のようになり、楽しく時間を忘れて描いてしまっています。今まで、価値のある経験をさせてもらったのだと実感し、私が他のひとと違う絵が描けるとしたら、その経験があるからなんだと思います」
現在はat home.の仕事以外でもイラストを描き、県内外で個展を開催しています。
「イラストを描くようになって、描いたものを好きなお店や人にプレゼントすることが、とても喜ばれるということを知りました。それは自分でもうれしいことでした」
作品で勝負してみようと、ギャラリーの担当者に直接お会いして、絵を見てもらいながら個展の開催場所を決めました。
「フランスでも個展をやってみたくて、フランスでも受けるんじゃないかなという友人の言葉に応えて、もっとがんばって、いっぱい描いていこうと思っています」
やってみないとわからないから、と希衣さんは、はつらつとそういいます。

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2020年9月 銀座・月光荘画材店のギャラリーで行われた個展、
星 希衣 展 Hoshi Kie Exhibition『”mes couleurs” ー私の色たちー』の様子

「やりたいと思えないと体が動かないです。できるなら人生は、自分のこころとからだが一致して、やりたいことをやる、ただそれだけなんだと思います」
いつも決断が早く、瞬時に行動するという希衣さん。
その健やかさは、地域の暮らしを楽しくさせるお店の喜びへ、そして自身の喜びにもなる作品に広がっています。

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075_08 shop

– – –
at home.オリエントパーク日和田店
https://www.zakka-athome.jp/
〒963-0534 福島県郡山市日和田町前田90-1
024-973-8410
10:00 – 20:00/年中無休
あり

ギャラリー&zakka みつあみ [ at home.オリエントパーク日和田店内 ]
https://www.instagram.com/mitsuami_gallery/
土日+不定期 11:00 – 17:00
営業日、営業時間はインスタグラムでご確認ください。

2022.05.06 取材 文:yanai 写真:BUN
フランス蚤の市の写真 提供:星 定宏 個展の写真 提供:小山 加奈(シロヤマ写真館)

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