100-FUKUSHIMA vol.063
おむすび一路 飯田篤志さん
できたてを食べてほしい
ごはんをきゅっ、きゅっと2、3回むすび、ぱりっとした海苔にくるんで、仕上げる。
おむすび一路、店主の飯田篤志さんが、カウンターでおむすびをつくって見せてくれた。
「具材はたてに入れると上から食べ進めて、最後までごはんと具材を味わうことが出来ます」
飯田さんが、計量したごはんの中央部分をひらいて、具材を入れるところをのぞき込み、なるほどと感心してしまう。
「むすんで、一番おいしい時にお出ししています。1分も経つと海苔が状態も変わるので、お客さんにはなるべくできたてを食べて欲しいです」
焼きたて、炊きたて、むすびたて
「食べるのと同じく、作るのも好きなんです。高校生の時に飲食店でアルバイトをして興味を持ち、美味しいものを自分で作れるようになったら一番いいなと趣味から始まって、それがずっと続いている感じです」
地元で商売がしたいと、おむすびの専門店を開いて、今年で5年目。
もともと広東料理をやっていた飯田さんは、自分で店を持つなら、油はなるべく使わず、美味しいお米を使いたいと考えていました。それから現在の場所を見つけ、自然とメニューも絞られていったといいます。
「周辺に子どもからお年寄りまで利用できる施設がいっぱいあるので、みんなが食べられるものにしよう。そこから、おむすびに絞られていきました。今までやってきた中華料理もごはんに合うものばかりなので、それをおむすびに入れてもいいなと思いました。これまでも仕出しでおむすびを作ることがあり、基本はできていたので、そこから洗練させていきました。他ではやっていないこと、ここだから味わえるものにしようと、鮭は炭火焼き、たらこも炭であぶってから。焼きたてを炊きたてで、むすびたてをお出しすることにしました」
お店で使うお米は、コシヒカリと天のつぶ。天日乾燥のものを使用。五升釜をふたつ使って、営業時間中に3、4回炊き、具材も合わせて作ります。農業をされているご両親が作る野菜を、飯田さんは、ブランド野菜のように見た目は立派ではないけれど、味では採れたてに勝るものはないといいます。
「お米は須賀川の100%天日乾燥のお米を使っています。籾殻貯蔵だと酸化もしにくく、天日乾燥だと種子が生きているので、呼吸をしながら熟成されていきます。籾殻の香りや水分量がちょうどよくなり、味がのってくるのです。季節によって、状態が異なるので、お米の炊き方、ブレンドを変え、この海苔じゃ歯切れが悪いなと思う時は、海苔屋さんに頼んで、産地を変えています」
あの時のおいしさ
あの魚が食べたいから釣りに行く。山歩きもおいしい山菜が採れるから行く。
飯田さんの興味や関心には、いつも「これが食べたい」があります。
本当は、肩肘張らずに野生動物の肉と手作りのビールを楽しむハンターズバーをやってみたかったといいます。
「父が猟をやっており、小さい頃に食べた野生の鳥や動物がうまいなあと思っていて、大人になってその味を思い出すのですが、食べられる店はありませんでした。シンプルな焼き鳥を砂糖醤油で食べていたのですが、今はジビエなどの肉もフレンチではベリーソースなど甘いソースで食べられているので、あの頃の食べ方は合っていたんだと思いました」
毎日仕込みをして、毎日あたらしい
お店の営業の仕方は何度か見直し、現在の営業時間は10時から15時になっています。
「目標は、このままお店を続けていくこと。細く長くをモットーに始めました。今は下の子どもが保育園に通っているのでそれに合わせた営業時間にしています。妻も一緒に働いているので、朝、保育園に子どもを送って、店が終わり、後片付けをして、子どもを迎えに行きます。店を始めたときは、いろんな営業の仕方を考えていましたが、まずは小さく始めて、それから、夜の営業をしてもいいし、宅配を考えてもいい。そのときの状況に合わせて案を広げていくのがいいと思っています」
ご自身で作って、食べる喜び。食材を届ける方々とのつながり。
それらをいつもお客さんに、焼きたて、炊きたて、むすびたてで届けること。
ご自身やご家族、スタッフの暮らしに沿う仕事の仕方で、お店にはそれらが穏やかに、しっかりとまわり続けています。
「有り難いことに、店は毎日売り切れが続いています。だから、毎日仕込みができることが嬉しいんです。毎日、食材がちゃんとなくなって、新しいものをいい状態でお出しできるので。材料を余らせてしまうと明日使えるか、使えないかを考えるのがストレスになってしまうので、一日が終わってゼロから毎日仕込みができると、新陳代謝がいいと言うのか、ストレスも食材のロスもごみも少ないので、このままうまく維持できたらいいと思っています」
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おむすび一路
〒963-8861 福島県郡山市鶴見坦1丁目13-20
024-954-3383
10:00 – 15:00
日曜日、祝日
2021.02.25 取材
文:yanai 写真:BUN