100-FUKUSHIMA Vol.015
Odaka Micro Stand Bar オムスビ
小高駅前、キッチンカーの小さなカフェ
南相馬市小高区 JR常磐線小高駅前に、小さなカフェがある。
毎週土曜、日曜に営業する、Odaka Micro Stand Bar オムスビ。運営するOMSB(オムスビ)手作り実行委員会のメンバーは、平日はそれぞれに仕事を持ち、週末は駅前でカフェを開く。
この日お会いしたのは、OMSBのメンバーで、プログラマーの森山貴士さんと役所で働く蒔田健二さん。
メンバーは森山さんが主催するイベントで出会った。
「まだまだ店も少ない町で、人が集まれる場所を自分たちで作れないか」
自分たちのできること、それを外に見せていこうと活動が始まったのは2016年の夏。
この地域では、服や雑貨などの買い物は仙台市や名取市へ出掛けるという。森山さんもまた出掛けた仙台で、不思議な自転車を引いた人を見かけて声をかけたのが、キッチンカーのカフェをつくるきっかけになった。
「自転車で移動しながら販売を行うカフェで、尋ねるとまちづくりを考えているというので、自分たちにもできるんじゃないかと相談するようになりました」
思いついたのは、軽ワゴン車を改装したキッチンカー。メンバーだけでなく、地元の高校生も手伝いに来てくれ、2ヶ月かけて完成させた。
相談していたカフェの方から豆を買い、メニューはコーヒーのみの小さなコーヒースタンドが始まった。
自分たちがその姿勢を見せていれば、次につながる
OMSBでは、地元野菜を販売するマルシェやピザ作りも開催している。
まだまだ町に足りていないと思うことは試行錯誤でもやってみる。
「小高区が避難解除になって1年。町には2000人の住民がいます。小高産業技術高校には500人の生徒がおり、特に女子生徒の親御さんは通学路に街灯がないことを心配していました。OMSBで小さなソーラーライトを販売して、買ってくれた方たちと通りに設置するなど、いろんなことを試しています」
ゆるいチャレンジ、とりあえず初めてみるにはちょうどいい環境だと森山さんはいいます。
「まだ何もないこの環境では、失敗してもいい。高校生だって挑戦していい。自分たちが目的のために行動を起こす姿勢を見せていれば、次につながっていくと思っています」
毎週必ずコーヒーを買いに来てくれるお客さんがいること。
カフェを始めて、コーヒードリップに本気ではまり始めてきたこと。
毎週のようにメディアの取材が来ていること。
復興支援の問題点。災害で昔から何度もこの地域はなくなりかけながら再生してきたこと。
興味の無い人を振り返らせるほど難しいことはないという、森山さんが担当している高校の授業でのこと。
テントの下で、アイスコーヒーを飲みながら、取材するでもなくつづいた世間話し。
初めて来た小高区。そこで聞く真っ当な暮らしぶり。
その間に元気な高校生たちがやってきて、ギターを弾いたり、歌いながらカホンを鳴らす。
電車の時間が来て、「じゃあまた」と手を振って帰っていく。
ご近所の方がコーヒーを買いに来てベンチで一服していく。
「こんにちは。アイスコーヒー、飲んでいきませんか?」
通りで声を掛け合う。こうやって、しっかりと暮らしは続いていく。
現在、新地町から双葉町にかけて、海岸堤防の復旧工事が進められている。完成は平成30年3月。
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Odaka Micro Stand Bar オムスビ
南相馬市小高区 JR常磐線小高駅前
毎週土曜、日曜 9:00〜15:00
https://www.facebook.com/odakao.msb/
2017.07.08 文:yanai 撮影:BUN