郡山全集|支え合う日々
056 高橋金物店 高橋ハナヱさん
愛犬ビビちゃんも迎えてくれる高橋金物店
2月の晴れた日に、桜通り虎丸交差点の近くにある高橋金物店を訪ねた。店先に立てかけてある数本の竹ぼうきが冬の陽の光をいっぱいに受けていた。
昨夜まで降り続いた雪がきれいに片付けられている。
「朝早く起きて雪かきをしたんだよ。自分の店の前だけがきれいならいいってもんじゃないからね。できるとこまでやるよ」
高橋金物店のおかあさん、高橋ハナヱさんが笑顔で話をしてくれた。ハナヱさんの側には、愛犬ビビちゃんがちょこんとお座りをしている。ビビちゃんは、7歳になる雄のプードル犬だ。
「みんな始めは、ぬいぐるみだと思ってね。あ、目が動いたってびっくりするんだよ。ちょっと倉庫に行っている時なんか、お客さんが来るとワンワン吠えて教えてくれるから助かるね」
ビビちゃんの背中を撫でながらハナヱさんが嬉しそうに話した。
高橋金物店は、昭和2年開業。今年で83年になる。現在は、息子さんの高橋紀博さんとハナヱさんでお店を営んでいる。
嫁に来てお店に出たばかりの頃は、
「いらっしゃい」という言葉が
なかなか言えなかったね。
「私は、日和田町の方から23歳の時に嫁に来ました。お店に出たばかりの頃は恥ずかしくて、いらっしゃいという言葉がなかなか言えなくてね。あの頃は、雑草取りの田車の仕組みをするのが大変だったね。毎日が忙しかったけど活気があって楽しかったよ」
ハナヱさんが41歳の時に、ご主人が亡くなった。
「心筋梗塞であっという間だったね。長男が高3、下の妹たちが中1と小学校の3年生でした。子どもたちがいたから頑張れたよ、あの頃はじいちゃんもいたし、支えはやっぱり家族だね」
穏やかな表情で当時を振り返るハナヱさんだ。
お客さんの中には、まるで自分の家に帰ってくるようにお店に入ってくる人も多い。豊富に揃う品物のことはもちろん、小さなネジやボルトひとつのことでも丁寧に話をきき、親身になって説明するハナヱさんは、お客さんの人気もの。テキパキと応えるフットワークの軽さの中に、長年培われ積み重ねてきた仕事への思いを感じる。
「みんな、おかあさんおかあさんって声をかけてくれる。80歳ぐらいのお年寄りの人たちも、おかあちゃんいるかい、って言いながら店に入ってくるもんね」
うれしそうに声をあげて笑うハナヱさんだ。
花見、わらび採り、新米を食べる会、忘年会。
いろいろ楽しいよ。年に一度の旅行も楽しみだね。
「楽しみは、中学生時代の友だちと会うことだよ。還暦の頃かな、10年位前に白鳥会(しらとりかい)という会に入って何かあるたびにみんなで集まりワイワイやってます。花見、わらび採り、新米を食べる会、忘年会。年に一度の旅行も楽しみだね」
白鳥会は、男女10名ほどのグループ。ようこちゃん、さだちゃん、ねもちゃんと子供時代のように呼び合いながら話に花が咲くという。
「だんだん年をとってきて最近は、身体のことが話題になるね。腰が痛いとか膝が痛いとかね。食事が終わったあとはみんなそれぞれに薬を出して飲むんだよ。あんたは何種類だい、自分は3種類だとか、薬の数を競ったりして笑い合ってるよ」
いつまで続くかなあ、と笑うハナヱさんの側でビビちゃんが、大きく伸びをした。
「店は一人ではできない、息子と二人で一役だと思っているよ。今の世の中は容易でないし、息子には苦労をさせっぱなしでいる。でもみんなに親切でやさしいと息子を褒められるとうれしいね」
そう言ってハナヱさんは、やさしいおかあさんの笑顔を見せた。
「これから友だちが来るんだよ。朝から黒豆を煮て待っているところなの。たくわんや白菜を漬けて、できたよー、おいでー、と声をかけ合って過ごしてるよ」
そう言いながら黒豆とたくわんの漬け物をごちそうしてくれたハナヱさん。ごちそうさまでした。とても美味しかった。
これからもどうぞお元気でビビちゃん、息子さんと仲良く歩いていってください。ありがとうございました。
(有)高橋金物店
- 〒963-8014 郡山市虎丸町19番21号
- 024-932-0221
2010.02.25取材 文:kame 撮影:watanabe