郡山全集
直売所へ行こう|022 西田町夕焼け市
郡山市西田町三町目仁王ヶ作39-1
通称「小和滝公園」セブンイレブン西田店駐車場内
夕暮れ時、2時間のお楽しみ
直売所を始めるときに、迷わず夕方の時間を選んだ。
「なぜでしょうね、夕暮れ時の2時間、すぐにそう決めました」
自然に「夕焼け市」という名前が浮かんだと会長の鈴木正衛さんは西の空をまぶしそうに見ながら話してくれた。
夕方の4時前、セブンイレブン西田店駐車場。バイクや軽トラックに野菜や花を積んだ農家の人々がやってきた。ゴザを敷きそれぞれの作物を並べていく。ときどき笑い声がわきあがり、なにやら楽しそう。
色とりどりの花、ネギ、さつまいも、里いも、ニンジン、よく育ったゴーヤなどが行儀よく並べられる。エプロンをし、帽子をかぶったおばさんたちが小さな椅子に腰をかけスタンバイ。
さあ、夕焼け市のオープンだ。
素朴な味を伝えたい
西田町夕焼け市は、平成6年にスタートした。
現在の会員は13人。「ただいま会員募集中です」鈴木さんがひかえめに言う。
「西田町は農家が多く、ほとんど自分の家で農作物を作っているからね。お客さんは、近郊から来る常連さんが多いですね。お目あてのものを買ってくれます」
有機栽培で小麦を作っている宍戸孝美さんは、自家製小麦粉、うどん、もちなどを積み上げてお客さんを待つ。
今、揚げてきたばかりだというドーナツと蒸しパンはお客さんに食べてもらうために用意してきたもの。素朴でなつかしい味がする。
「子供たちに食べてもらいたいね。今は食べ物は豊富にあるけれどほとんどは添加物の入ったもの。無添加の本来の味を伝えたいですね」
宍戸さんのお孫さんは、地粉を使った手作りのパンやお菓子を喜んで食べるという。「オレの孫たちはしあわせだよ」
うれしそうに笑う宍戸さんの隣りで鈴木さんが声を重ねる。
「夏休み、東京の孫が来たときに3時のおやつにパンを作ったんだよ。宍戸さんとこの地粉を使ってね。おいしく出来て喜んでいたよ」
お孫さんは中学1年生と小学5年生の女の子。おじいちゃんと一緒のパン作りは夏休みのいい思い出になったことだろう。
「今日やろうとしていたことが全て予定通りに終わったときの充実感は何にもかえることができない」と宍戸さんが言えば、「オレたちは酒を飲まないからね、一日の終わりにはテレビ見て、ネコかまって平和な気持ちになって眠るよ」とうなづきながら鈴木さんが受ける。
オレたちは10年来の仲良しと顔を見合わせ笑いあう。
おばちゃんが作らなかったら食べられない味
漬け物名人、増子さんのみそ漬」
「75歳になるんだよ。もうやめようかと思ってんの」
おばちゃんが作らなかったら食べられない味だから、と言われるとガンバロウと思い直す。増子トキ子さんの漬け物には定評がある。
定番のみそ漬、ナスやキュウリの漬け物、梅漬け。どれも見るからに好ましい色合いのものばかりだ。
「19歳で嫁に来たんだよ。漬け物は、ばあちゃんが作っていたのを見て覚えたんだよ」国鉄職員だった父親に農業の楽しさを教えてもらっていた増子さんは、嫁に来てからますます農家の仕事に精を出したという。
「あっという間だね、昨日の夜に嫁に来たように思える」
増子さんは始終にこやかで、そんなことを言いながらまるで少女のように笑うのだ。
「朝は5時半に起きてマッサージをする。ひと仕事して昼はグーグー1時間は眠るよ。身体がもたないからね。それからまた仕事をする。今日は夕飯をつくってからここに出てきたんだよ。帰ったらすぐに食べられるよ」
元気の秘けつは「働くこと」。迷わずにそう答えた。
夕焼けの空を見ながら
「みんなの顔を見に来るんだよ」自転車で来た小柄なおじいちゃんは毎回、ここに顔を出すという。おばちゃんたちの向かい側にしゃがみこみ、元気だったかいと声をかけ話しがはずむ。
杖をついたおばあちゃんに寄り添う女の人。まるで姉妹のようにそっくりだと口々に言われ「ちがうよ、わたしは娘だよ」と大らかに笑い、目の前に広がる夕焼けの空を見る。
薄暗くなりかける頃に、手作りの照明に明かりがともる。
なにやらお祭りの夜店のような風情がある。
学校から解放された小学生の男の子が、母親に手をひかれながら珍しそうに電球を見上げている。
その頬を夕日があたたかく照らしていた。
西田町夕焼け市
- 郡山市西田町三町目仁王ヶ作39-1
通称「小和滝公園」セブンイレブン西田店駐車場内 - 毎月第1・第3金曜日 AM10:00~PM5:00
5月~9月 PM17:00~PM19:00
10月~12月 PM16:00~PM18:00
1月~4月はお休み - 問い合わせ
西田町夕焼け市運営協議会事務局 TEL.024-972-2111
2009.09 取材 文:kame 撮影:BUN