郡山全集
直売所へ行こう|018 おはよう市場
おはよう市場:郡山市総合体育館西側駐車
日曜日の朝、早起きは三文の得。
野菜とおばちゃんに元気をもらう。
カートをひきながら歩くおばあちゃん。
犬を連れたスエットスーツのおじさん。
杖を片手に歩くおじいちゃん。
帽子をかぶりリュックを背負ったおばさんたち。
自転車で乗り付ける人、次々に入ってくる車。
朝の5時過ぎ、公園の広い駐車場は人だかりだ。
毎週日曜日の朝に開かれる「おはよう市場」は活気に満ちている。一瞬、どこかなにかのイベントに紛れこんだような気持ちになる。
軽トラックやワゴン車を背にずらりと露店が並び、人々はそれぞれの思いで早朝の散策を楽しむ。
「おはよう市場の特徴は、作物の作り手が自分で売っていることです」
コバルトブルーのエプロンに緑のキャップをかぶり、穏やかな目をした古川繁隆さんは「おはよう市場」の会長さんだ。
「毎回、約1000人のお客さんが来ます。どこから来るのかと不思議なくらいですね」雨の日でも300人は来るという。
「心待ちにしてくれるお客さんがいるから天気の良くない日でもがんばれます。この夏はおかげさまで雨に降られた日はなかったね」ありがたいことですとうなずきながら目を閉じた。
リュックを背負ったおばさんが、段ボールに山盛り入った細長いナスを手に取り見さだめている。ナスを売っているのはおばあちゃんだ。
「珍しいナスだね。どうやって食べるの?」と声をかけるお客さんに、このナスはない、天ぷらにしても炒めてもうまいよ、と日焼けした顔をほころばせながらていねいに答えている。
その隣では、トマトを売るおばさんの元気な声が響く。群がる人々の前に
「この赤さでプリプリのままバンバン持つよ。常温で4、5日は置けるよ」おいしいから食べてみてと、見るからにうまそうな真っ赤なトマトをどっさりと積み上げていく。
いつも来るという男の人は「年寄りはね、ここに元気をもらいにくるんだよ。野菜を売っている人の顔を見にね。この前40年ぶりに若い頃の友人にバッタリ会って驚いたよ。うれしかったね」
奥さんへのお土産にと、もちを買いながら話してくれた。
「この市場は、かあちゃんでもっているんだよ」
こひときわ明るい声でお客さんとやりとりするのは、りんご売りの力丸さだ子さんだ。ご主人の憲一さんと桃やりんごを育てている。
「くだものは手入れが大変。りんご一個一個にするまでがひと苦労です」手の中にりんごを愛おしそうに包み込みながら話す。
「そうだねえ、お産と同じだね。産みの苦しみです。収穫の時には今までの苦労がサ-ッと無くなる。ここには嫁に出すような気持ちで来ます」
オレたち男にはお産の苦しみはわからんもんなあと憲一さんが笑う。
「そうそう、おはよう市場はかあちゃんでもっている。ほとんどが夫婦でやっているけれどここでは我々男は後ろで支える役目です」
いつのまにかご主人たち数人が集まりうなずきあう。どんなほめ言葉もかなわない奥さんへの感謝の気持ちが伝わってくる。
「食は生命なり」まちがいのないもの、
それを食べることによって
明日への生命につながっていく
おはよう市場は今年32年目を迎えた。
「現在の会員数は51人。今日来ているのは40件くらいかな。この32年の間で自然に売る場所が決まっていったんですね。スタート時は今の3分の1の人数でした。その中には世代交代した会員もいます」
野菜、果物、花、卵、漬け物やもちなどの加工品。お客さんもそれぞれ定着したきた。
「ここの魅力はなんといっても売り手とお客さんとのやりとり、コミュニケーション。名前は知らなくても顔は覚えていますよ」
いつも声をかけてくる人にはついついおまけをしてしまうという古川さんは、おいしい「なめこ」を作る「古川農園」のご主人でもある。
愛情をこめて作物を育てること。おいしいと食べてもらうこと。そこから働く誇り、喜びが生まれてくる。
「食は生命なり。まちがいのないもの、それを食べることによって明日への生命につながっていくのだと思います。生産者と消費者の架け橋でありたい。この豊かな自然環境で営まれる農業の良さをたくさんの人に伝えたいですね」
自分たちの作物が消費者の安全を守る。そう意識することが大切だと古川さんは語る。
おはよう市場
- 郡山市総合体育館西側駐車場
- 4月~9月 毎週日曜日 AM5:00~AM7:00
10月~12月 毎週日曜日 AM6:00~AM7:30
1月~3月 第3日曜日のみ AM6:30~AM8:00
問い合わせ
- 郡山市おはよう市場運営協議会 024-954-2208(会長自宅)
- 郡山市農業センター 024-957-2880
2007.09 取材 文:kame 撮影:BUN