郡山全集|郡山の手仕事職人
014 国分椅子店 国分祥夫さん
今はウレタン。昔はバネ。
国分椅子店は、椅子の生地の張り替え専門店。食堂椅子から応接セットまで手掛け、ウレタンの入れ替えも受ける。
この道40年になるご主人の国分祥夫さんを訪ねた。
「椅子屋なのに、座ってもらう椅子がない」
笑いながら国分さんは、ブリキ缶にウレタンのマットをのせ即席の椅子をすすめてくれた。なかなか座り心地がいい。
「父親は家具屋をやっていました」
タバコに火をつけ、うまそうに吹かしながら話してくれた。
「自分は椅子の修理専門でいこうと決めた。昭和40年代の頃だね、東京の府中で見習い修業をした。給料ももらってね。あの頃はバネの入った椅子の修理を習っていた。バネに糸を巻いてね」
ところが時代とともに、ウレタンが出回ってくる。
「クッションになるものは今はウレタン。昔はバネ。以前はバネの上にワラをほぐして水を入れ、ホンワリさせて使った。専用の細いワラでね、手加減で修理していったもんだ」
習ったことは通用しなくなる。どんどん変わっていく。
「それがあたりまえなんだけどね」そう言いながらタバコの火を消した。
ひとつひとつ違うからおもしろい
「親父が使っていた椅子を直してほしい」
思い出の椅子の張り替えは、腕の見せどころだ。椅子事態の修理はそんなに難しいことはない。布張りの柄を合わせるのが大変だという。「実はね、見積もりが一番大変。いつも頭を悩ます」と打ち明ける正直な国分さんだ。
張り替え用の布や皮も豊富に取り揃えており、お店に来て好みの生地を選ぶことができる。
「カーテン生地を持ってきてこれで、というお客さんもいるけれど長くはもたないね。椅子用の生地は丈夫ですよ」
大切なものだから、と古い椅子を4~5台持ちこまれたことがある。
「ワラとウレタンをちぎって直した。あれは風情がある椅子でね。仕上がりを見て奥さんがとても喜んでくれた」ワラの感触はやっぱり違う、いいねぇ、と目を細める。
昔、学校を退職した時にいただいたという教頭先生の椅子を直したこともある。
「思い出に自分の書斎に置いておきたいといってたなあ」椅子も思い出もひとつひとつ違うからおもしろい、と国分さんはいう。
早寝早起き朝ごはん、国分さんの話
ここ10年ぐらい、夜はたいてい9時には寝てるね。
朝は5時には起きる。
夜中の1時頃に目が覚めることもあるよ。
仕事は朝の7時から始める。
オレたちは団塊の世代ど真ん中だからね。歌を歌うのは好きだね。
昔は歌声喫茶なんてものがあってね、よく通ったなあ。
コブクロなんか歌うよ。
「さくら」は声が出るときと出ないときがあるなあ。
クラシックも聞くよ。
ラジオのFM放送はよく聞くね、仕事しながら。あんまりいいのはやらないけどね。
タバコも吸うし酒も飲むよ。
よく思い出をよみがえす仕事とか、人の思い出に貢献してくれるとか言われるけどそんな特別な思い入れは自分にはないね。
いい仕事をするだけ。それだけ。
マジシャンのマギー司郎に似てる。
説得力のあるものいいも。
とぼけたところなんかも。
国分椅子店
- 郡山市虎丸町23-4
- 024-922-1990
2007.05.24 取材 文:kame 撮影:BUN