100年ふくしま。

vol.042 大道芸人 羽舞さん

2019/04/25

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100-FUKUSHIMA Vol.042

大道芸人 羽舞さん

大道芸の魅力

4月7日日曜日、福島駅東口で開催された「ハルフェス・手づくりマルシェ」。
風が強い中、大道芸人・羽舞さんのパフォーマンスが始まると、道行く人が足を止め、次第にその表情には好奇心が広がっていきます。
「おしゃべりでも、楽器演奏や歌でも、道で芸をするのが大道芸です。お客さんが盛り上がれば、10分でも20分でも長く、自分の体力が持てば2時間3時間と楽しませることが出来る。そんなお客さんとのやりとりが、大道芸の魅力だと思っています」
福島市在住の大道芸人、羽舞(うまい)さんは、大道芸を始めて9年目。県内でも数少ないパフォーマーの一人です。
もともと体育会系で学生時代から野球を続けていた羽舞さんは、年齢を重ねても続けられること、そして人を驚かせ、喜んでもらえることがしたいという理由からカードマジックの世界へ。その後、横浜で大道芸と出会い、その奥深さを知ったことで、この文化を福島に根付かせたいと大道芸の道に入りました。
「一方的に自分の芸を見てくれというのではなく、その日の客層から、パフォーマンスの内容やBGMを構成してきます。以前、お客さんに『歌いながらこれをやって』と言われ、『じゃあ、会津磐梯山を歌いながらやってみますね』と応えると、お客さんが『あんた面白いわ、楽しかった』と言ってもらえたことがありました。そのことがきっかけで、人との距離を縮めてくれる大道芸の魅力を体一本で勝負したいと思いました。私とお客さん、両方の気持ちでパフォーマンスが出来上がっていく。そのライブ感を大切にしています」
人の心理に働きかける話し方は、カードマジックでの経験が活かされています。人が行き交う場所で人の流れを見ながら行うジャグリングやバランスのパフォーマンスには、終始周りの状況に細心の注意を払わなければなりません。
パフォーマンスの最後は、お決まりの投げ銭式。羽舞さん愛用の帽子にお代が入れられます。

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福島にも大道芸の文化を

福島県近辺では、宮城県の遠刈田温泉、茨城県日立市で毎年大道芸の大きなフェスティバルが開催されていますが、福島県内で大道芸を目にする機会はまだまだ少ないのが現状です。
「関東には多くの大道芸人たちがおり、みな仲間同士で場所や時間を見つけては出演のやりくりを行っています。東北でパフォーマンスをするときには東京から仲間を呼んだり、反対に東京や他の地域でパフォーマンスをする機会があるときには私も呼ばれて行ったりもしています」
羽舞さんは、群馬県にある沢入国際サーカス学校を卒業した先輩パフォーマーに出会い、ジャグリングの技を盗むように練習を重ねました。最初は見よう見真似で、ジャグリングはもちろん、人を惹きつける話し方や音楽の使い方についても学び、そこへ自身のオリジナリティを加えていきました。
「体が動く限り基本的なジャグリングの技はできるので、88歳で現役の方もいらっしゃいますね。私の場合はすごい技ではなくても、観てくれるひとに笑いを伝えたいと思っています」
震災後から大道芸を始めた羽舞さんは、ボランティアで仮設住宅を訪ねて、パフォーマンスを行いました。
「始めたばかりの頃は、緊張してしまったり、うまくボールが回せなかったりしたのですが、それでも一生懸命やっている姿を見てもらえれば、なにか伝わるはず。そして少しでも笑ってくれたらいい、そう思って訪ねることにしました。そこで人に喜んでもらい、自分の技にも少しずつ自信をつけさせてもらいました。今、浪江町にも人が戻ってきて、そのときお会いした方々に『また来てよ』と声をかけてもらっています。町で会えた時には『また会えたね』と言い合えるのがうれしいですね」
このボランティア活動は、その後、東北六魂祭への参加など羽舞さんの活動の場を広げるきかっけにもなりました。
イベントに参加する時は、設営を手伝い、その日のパフォーマンスを撮影して、次回のイベントのチラシに使ってもらうことで自身のプロモーションを兼ねながら、主催者側とも互いに協力しあって活動を行っています。
各地にいる大道芸の仲間、パフォーマンスをする時にはお客さんと、イベントに参加するときには主催や同じく出店参加
の方々と声を掛け合い、密につながりから羽舞さんのパフォーマンスがつくられています。

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大道芸人の羽舞さん。「パフォーマンスをすることが、日頃の体のトレーニングになっています」

信じるものは自分の体

「年間目標を立て、依頼されるイベントの他に活動場所を決め、1 日のスケジュールを考えます。休日をつくるのは自分次第です。活動場所までの移動は車中泊で節約することもあり、イベントがない時は道の駅や公園など自分の足で活動場所を見つけパフォーマンスを行なっています。活動場所で出会った人から個別に依頼を受けることも増えてきました」
活動情報はご自身のSNSでお知らせしています。
当日の天候によっても予定が変わっていくので、私たちもそこで会えたらラッキー、という楽しみもあります。
「これは人としても大事なことですが、路上で行うパフォーマンスは安全を気遣った目配りができなければ芸とは言えないと思っています。福島県内でも大道芸がもっと身近なものになるといいです。町の商店街のイベントに芸人さんを呼べば、観る人が楽しいのはもちろんのこと、地域のコミュニケーションにも役立つと思っています」
自分の活動はとても泥くさいことだと、羽舞さんは笑いますが、それがなにより観る者にとってはシンプルで潔く、楽しいひとときになるのです。

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大道芸人 羽舞
福島県福島市出身。東北を中心に活動中のコメディパフォーマー。
https://www.instagram.com/daidougei.umai/
https://twitter.com/hiro08301https://twitter.com/hiro08301

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2019.04.07 取材 文:yanai 撮影:BUN

2 thoughts on “vol.042 大道芸人 羽舞さん

  1. 天栄の道の駅で炎天下の中素敵な芸最高でした。また応援したい福島のイベント必ず行きたいです。

  2. 羽舞さんのパーフォーマンス、国見の道で見ました。孫も感激。芸も面白かったけど、何よりトークが最高。これからもがんばって欲しい!

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