100-FUKUSHIMA Vol.029
陣野商店 陳野重直さん、智子さんご夫妻
60歳からが楽しい
郡山市富久山町に24時間無料受け入れの大きなエコボックスがあります。
昭和27年創業、再生資源回収業の陣野商店が設置したものです。
「60歳を過ぎたところで仕事が楽しくなりました。自分たちが社会的意義を持っていると自信になったのです。」
そう代表取締役の陳野重直さんは話します。
陣野商店には毎日、多くの回収物が集められ、分別が行われた後にリサイクル施設へ、まだ使える物はリユースとして国内外でそれらを必要とするところへ届けられます。
この仕事は多くのモノと作業を要するため、「500坪以上の土地を持て」とお父様に言われていたという陣野さんは、2年前に喜久田から地元である富久山町に事務所を構えたことで、やっと実現できたかなと話します。
これまで、空ビン問屋をメインに、資源物の回収・買取を行い、企業や団体のお客様が多かった陣野商店では、この数年、個人のお客様からのお問合せが増えています。
「高齢の方から、自分ひとりでは処分作業ができないという話を多く聞くようになりました。お電話で話しをするたび、いろんな『困った』があることを知りましたね。」
そう話すのは、お問合せの電話を受けていた奥様の智子さん。
もっと自分たちに出来ることはないのかと考えた陣野商店は、敷地内に個人のお客様へ向けたエコボックスを設置し、片付け事業を始めることになりました。
「それからはとにかく相談は断らず、必ずお客様に会いに行く。話を聞いた後にどういった作業が必要なのか勉強をしながら考えて、自分たち以外に適任のところがあればそこに協力してもらうようにしたのです。」
いろんな「困った」を一緒に考える
片付けの依頼は、家庭から事務所、店舗、空き家の家財整理、ご家族の遺品整理とさまざまです。
「片付け作業だけでなく、その後の部屋のクリーニングを依頼されることもあり、ハウスクリーニングの事業所にも声をかけ協力をお願いしました。自分が動くと周りも動く、この事業に協力してもらえることがありがたいですね」
ともに事業を支えてくれる、心強い取引先も増えていきました。
「専門分野のプロに声をかければ、依頼ごとに必要な機材をそろえ、作業手順もわかります。互いにこんなこともできるぞと示しては、そんなやり方もあったのかと褒め合って、それがおもしろく楽しいのです。おかげで回を重ねる毎に仕事も早くなっています。」
智子さんはその様子を「いい歳をしたオヤジたちが、いい顔をしてわいわいやっている」と称して、お二人は笑います。
いろんな「困った」をその道のプロに頼めば、いろんな知恵が出てくる。
お客様の依頼から、陳野さんご自身も感じていることです。
酒瓶はリサイクル優良品
陣野商店の敷地内は、整然と並べられた酒瓶のケースが目を見張ります。
質がいいねとほめられる酒瓶は、小売店で回収されたもの。ここでキズがないかチェックされ、きれいに洗浄された後、蔵元へ運ばれます。そして、蔵元で酒が詰められ、また小売店で販売されるのです。
「酒瓶は昔からあるリサイクル優良品なんです。リユースのシステムがそこにありますね。何度も使われているのに瓶がきれいなのは、小売店での扱いが良いから。そうした人の手があることでこのシステムが守られてきたんです。」
自分の家の仕事として、資源の流れは当然世の中の人たちも理解しているものだと思っていたけれど、実はそうではなかったと陣野さんはいいます。
お話しを伺うたびに、私たちもまだまだ教わることが多いのです。
みんなはひとりのために、ひとりはみんなのために。
陣野商店では、次の方へ渡ることを考えたリサイクルを行い、アジア・アフリカ等の海外途上国への支援も行っています。
また、地域の小学校では子どもたちのリサイクル活動をサポートして、PTAの活動資金へとつなげています。
「少しでも、力になれることがあればと思います。今、不要になったものが、次に誰かの役に立つことがあり、国内だけでなく海外でも、喜んで使って頂ける人々がたくさんいます。特に日本のぬいぐるみや衣類は、縫製や素材の質がよいので、中東・東南アジアなどでとても喜ばれています。」
衣類は、日本人と同じ体格の国の人へ渡るよう、中東・東南アジアの窓口となってくれる事業所へ届けられます。
学生時代、箱根駅伝の選手だった陳野さんが大事にしている言葉があります。
「みんなはひとりのために、ひとりはみんなのために。ものの始末から社会の仕組みを見ているように思います。自分たちができること、その仕組みを整えることで、これからの暮らしにつながっていくのではないかと考えています。」
– – –
陣野商店
〒963-8061 郡山市富久山町福原字鶴番30-1
024-983-3260
8:00〜18:00
土曜日・祝日
http://jinno-syouten.com/
2018.04.09 取材
文:yanai 撮影:BUN