郡山全集

SugarPine 山崎浩康さん、裕子さんご夫妻

2011/03/11
sugarpine

郡山全集|支え合う日々

062 SugarPine 山崎浩康さん、裕子さんご夫妻

手作り工房シュガーパイン

近所の雑貨店で、木の椅子を見つけた。子どもが座るような小さなものだ。木目や木の節がほどよく生かされたつくりに心が動く。
デザインがシンプルなこと、どこにでもスッと動かせること。座っても物を置いてもいい、なによりも木の持つ静かな佇まいがいい。
日々の暮らしにひとつあるだけで心が穏やかになるだろう。そう思わせる椅子だった。
今、家に置いてあるこの椅子は、手作り工房シュガーパインで作られたものだ。シュガーパインは、山崎浩康さん、裕子さんご夫妻が営む工房で、家具や木工品のオーダーメイドを受けている。
現在、浩康さんは会社勤めをしており、主に週末や休日を利用して制作に打ち込む日々を送っている。

01
ご主人の山崎浩康さん。
「かーさんは、23年前に出会ったときからあまり変わっていませんね。明るく朗らかでずっとそのままです」
02
奥さまの信江さん。
「子どもの頃は、おとなしくてどこにいるのかわからないような子でした。私も絵を描くことが好きなんですよ」
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木はあったかくて触っていると楽しい。

手を広げたような葉のカタチが愛らしい観葉植物のシュガーパイン。
この優しい響きの名を工房につけ、物作りを始めてから6年になる。
浩康さんは、西会津町出身。小さな頃から物を作るのが好きな少年だった。
「私の父親は宮大工でした。物心がついた頃から木には親しんでいました。でも父のように大工になろうとは思わなかったですね」
機械の設計や加工を仕事としている浩康さんが、本腰を入れて物作りをしようと思ったのは、お父さんが亡くなってからだという。
「木工は、以前から少しずつやっていたのですが、父が亡くなってから仕事として意識するようになりました。実家に帰ると道具がたくさんあります。同じカンナでも使い方が分からなくて、今の自分には使いこなせないものばかりです」
そう言いながら浩康さんは静かに自分の手を見た。
「おじいちゃんが生きていれば喜んで教えてくれたんじゃないかな。木はあったかくて触っていると楽しいんでしょうね。好きなことをやるのが一番いいと思います」
浩康さんの思いに寄り添うように裕子さんが言葉をつないだ。

自分にしてほしいと思う事は、
人にもしてあげたい。

「以前、家族5人で狭いアパートに住んでいた頃、このスペースにこの位の家具があったらいいなあ、と思って探したんですが見つからなくて。それじゃあ自分で作ろうと思ったんです。それがなかなかいい出来で家族の評判もよかったんですよ。そのことがオーダーメイドをやろうとしたきっかけでしたね」
自分はいつもお客さまの感覚になってひとつの物を作りたいという浩康さん。
図面をもらってその通りに作るのは簡単ですが、直接お客さまの要望をひとつひとつ聞いて喜んでもらえるものに仕上げたいです」と言う。
実際にお客さまの話を聞き、コミュニケーションをとるのは裕子さんの役割だ。お客さまにとってオーダーメイドはどうしても高いという印象があるという。
「使うとしたらこの方がいいけれど高くなるのでは?とか、こうして欲しいけれど予算がない、などあると思いますが出来る限り安くて思い通りに作ってあげたいですね。よくお客さんにそんなに安くていいの?と言われますが、私たちは生活出来る位の収入であればそれでいいんです。自分にしてほしいと思う事は、人にもしてあげたい。いつもそんな気持ちでお客さんに接しています。気を張らずにやっていきたいですね」と裕子さん。
「実は、わたしたち家族で聖書を勉強しているんです。聖書に“自分にしてほしいと思う事は同じように人にもしなさい”というイエスの言葉があるんですよ」
裕子さんは透き通るようなきれいな声でゆっくりと話してくれた。まっすぐ胸に届く柔らかな響きの声だった。

将来は、自分たちのリビングに見本になるような家具を置いてお客さまに見てもらいたい。

山崎家の2階には、広いリビングのスペースがある。見上げればワクワクするような屋根裏部屋もある。仕切りがなく明るく開放的な空間でとても居心地がいい。
「ここは家族や友人が集まる場所なんです。子どもたちも気軽に台所に立ったりお茶を飲んだりしていますね。お客さまとのお話もここでしています」
家を建てる時は対面キッチンにあこがれていたという裕子さんも今は思いきってひとつの広い空間にして良かったと言う。
「夢は、このリビングに見本になるような家具を作って置いておくことです。自分たちが実際に使っているものをお客さまに見てもらいたい。こういう扉をつけたらいくら位になるとか、ここはこの色で取手はこれでとか、土台になるものがあれば欲しい家具のイメージが具体的になっていくと思います」
そう言いながら浩康さんはキラキラと目を輝かせた。

お互いを「とーさん」「かーさん」と呼び合う浩康さんと裕子さんには、3人の息子さんがいます。
「とーさんと息子たち男4人が、女1人の私の感情をうまーく吸収してくれるので助かりますね」
そう言って裕子さんはチャーミングな笑顔を見せてくれました。
この春から2番目の息子さんがお父さんに弟子入りするということです。コツコツと一歩づつ、つらいことも楽しみながら前に進んでいけるといいですね。

シュガーパイン

  • 〒963-0201 郡山市大槻町南八耕地8-2
  • 024-961-4107

2011.02.12取材 文:kame 撮影:watanabe

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