郡山全集

hina 森郁子さん

2010/04/20

hina

郡山全集|支え合う日々

055 hina 森郁子さん

「クロワッサンの店」から「hina」へ

通りを歩いていると一軒のお店に目がとまった。
ショーウィンドーの「hina」の文字が印象的だ。桃の花を思わせる色に「ひな」の響きが重なり、心惹かれる思いでドアを開けると「いらっしゃいませ」と弾んだ声が迎えてくれた。
その声に記憶がある。お店の中でなつかしい顔がほほえんでいた。店主の森郁子さんとは20年ぶりの再会だった。
「hina」は、洋服や雑貨、キッチン用品、化粧品、お菓子や食品などの生活まわりのものを置いているセレクトショップだ。
森さんは、郡山で初めてクロワッサンの店を出した人。私はその頃の森さんの店に通っていた一人だ。
「クロワッサンはフランチャイズのお店です。若い頃からクロワッサンの店をやることが夢でした」
願いは叶い、クロワッサンの店は16年半ほど続いた。
時代の流れが変わっていく中で転機が訪れる。そろそろ場所を変え、引っ越しをしようと働きかけている最中に森さんはフッと目先を変えた。フランチャイズを抜けて一歩踏み出そう、自分のお店としてやっていこう、そう決心したという。
「その後7年ほど同じ場所でhinaとして営業していました。ここの場所に移転して来たのは2008年の3月で、ちょうど丸2年になりますね。hinaに来てくださるお客様の中にはクロワッサン時代からの方も多くいらっしゃいます。ありがたいことですね。感謝しております」
そう言いながら森さんは穏やかな笑顔をみせた。

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森郁子さん。
古い曲なんですが、先日ラジオから「思い出がいっぱい」という歌が流れてきたのを聞いて、ああいいなあって思いました。耳にやさしい歌が好きですね。
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影響を受けた年上の友だち

「ほんの小さな頃は、少女というより少年に近かったかもしれません。2歳上の兄にくっついて男の子の遊びをしていましたからね。もともと私自身が少女、少女していませんでした。母親の好みもあったんでしょうがピンクのお洋服なんか着たことがなかった」
いつも紺かグレーとかの地味な色を身にまとっていました、森さんはそう言って朗らかに笑った。
成長していくうちに近所の年上の友だちと出会う。
「その人は5歳年上のお姉さんで、持ち物や部屋に置いてあるものに惹かれました。自分の好みに合っていたんでしょうね、ああいいなあってワクワクするものばかりでした。こういうお店をやりたいなと思うようになったのもその友だちの影響があると思います」
森さんがセレクトするものは、自然素材を取り入れたものが主流でその思いは、洋服、パジャマ、エプロンから化粧品、雑貨、食品まで一貫して行き渡っている。
「化粧品ひとつ、お菓子ひとつでも必ず自分で試しますし、食べてみます。これはいい、美味しいと思ったものをお店に置くようにしています」お店には、驚くほどの品数があり、ひとつひとつ手に取って眺めていくのが楽しい。森さんの長年に渡って培われたセレクト力がお店の雰囲気を豊かに育てていく。

お客さまと顔を合わせ、話をしながら選んでいただく。

森さんの飾り気のない人柄は、訪れるお客さまに安心感を与える。
初めてのお客さまにもさり気なく声をかけていく。
「ネットショップの時代ですが、こうしてお客さまと顔を合わせお話をしながら好きなものを選んでいただきたいですね」
お客さまと話をすることによって生まれるものがある。お店の商品を通して思わぬ繋がりもできる。お店とは人と人との出合いの場でもあるのだろう。
「お客さまの中には日々、心の中に重いものを抱えている方もいると思います。そんな方がお店に来て目にとまったもののアドバイスを通してお話をしていくうちに自分の中にある知人には言えないようなことをポツリと話されることがあります。私はただ聴くことしかできないですが、口に出すと気持ちが楽になることってありますものね。話をしてちょっと元気になって帰っていただけたらうれしいですね」
お客さんにとってこのお店がささやかな心の寄りどころにしていただければいいかな、そんなふうに森さんは言う。

お客さまの言葉はありがたいです。

「来るたびに新しいものが入っていてうれしい」
「前に来たときに良かったから、また来ましたよ」
そんなお客さまたちの言葉を大切にしている森さんは、少々のことにはめげない草花のような強さを持った女性だ。
「気分転換は特にしないですね。落ち込むことはもちろん細かくありますが、気を晴らすために何かをするということはありません。健康管理には気をつけていますよ。小さな風邪はひきますが、おかげさまで熱を出して寝込むことはないですね。どんなことがあっても定休日以外は休まないようにしています。一昨年の夏、盲腸で入院した時以外はね(笑)」
人に恵まれ、お客さまたちに支えられてここまで来たという森さんは、感謝の気持ちを胸にこれからも歩いていきたいと話してくれた。

生活雑貨のセレクトショップ hina

  • 〒963-8024 郡山市朝日2-23-6
  • 024-933-1544
  • AM10:00〜PM19:00
  • 毎週水曜日

2010.02.24取材 文:kame 撮影:watanabe

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