郡山全集|支え合う日々
049 三松会館 松崎昭信さん、直子さんご夫妻
郡山にうまい店あり
郡山市駅前大通りから三松会館の看板が見える。
路地を入ってまもなく、紺に白文字の暖簾が風に小さく旗めいている。立ち止まりショーウィンドーの前で確かめるように見入ることしばらく。ラーメン・カツ丼・親子丼。焼肉定食・チキンライス・レバニラ炒め・かつカレー。ひととおり眺め満足して店に入る。
お昼時、広い店内はお客さんでいっぱいだ。いらっしゃいませの元気な言葉に誘われて、小上がり席で一息をつく。
さて今日は何にしようか。あれこれ悩んだ末にチキンライスを注文する。ここのチキンライスはなつかしい匂いがする。ついつい頼んでしまうお気に入りの味だ。
古き良き時代のちょっといい話
「自分は、父親の兄弟の養子に入ってこの店をやるようになったんですよ。17歳の頃かな。あの頃は自転車で出前をしててね、ラーメンを5丁も持っていくと汁がなくなっちゃうこともあったね(笑)
どこに行ってもかわいがられたなあ。冬の寒い日なんかに出前をすると、ストーブにあたっていけとか、風呂に入っていけとか言われたり、お客さんの苦労話なんかもよく聞かされました。
家内が店で働くようになって自然と仲良くなって一緒になったんです。家内はね、店のお客さんにも人気があって、毎日ラブレターが届いていたこともあったね。おとなしくて真面目なところがいいね、今もね(笑)
二人でどこかに出かけるなんてことはなかったね。寝る時間以外はひたすら働いていた。毎日やっていることに追われ、それ以上のことはできない。そうそう結婚する前の20代の頃、トンカツを揚げてて立ったまま眠ってしまい顔に大やけどをしたことがあったね。目だけ出して包帯をグルグル巻いて出前に行ったなあ。
それから蒸し釜でご飯を炊いていて底を抜かしたことが2回ある。疲れて眠ってしまうんだよね。いろいろあったよ。それでもいやになったり、やめたいなんてことは思わなかったね。
結婚して子供が生まれてからは、裏の家に寝かせて仕事をしながらめんどうを見ました。時々両親にも見てもらってね、よく育ってくれたと思いますよ。
当時は回りに食堂がいっぱいあって、同業者ともみんな仲が良かった。飯が足りないときは、ご飯を貸してもらったり、お互いに持ちつ持たれつ助け合いながらやっていましたね。
従業員はみんな住み込みで働いていました。あの時代は家出人が多くてね、北海道とか仙台から家を出たい一心でそんなにお金も持たないで来るんですね。東京まで行きたいけど汽車賃が郡山までしかない。それでここに来て、食うだけでいいから雇ってほしいと頼まれる。断るなんてそんなことはしなかったよ。
こんなこともあったなあ。家を出た娘さんを追ってきた両親が、一日郡山中を探しても見つからない。やれやれあきらめるか、と腹ごしらえに入った店が三松会館で注文をとった子が探している娘さんだった、なんてまるでドラマのような話だね。古き良き時代だったね(笑)」
目指すは、特別の味ではないけれど毎日食べてもあきないもの
「こだわりなんてない。旨いものを作るのはあたりまえだもの。ストレスなんてたまらないよ。お客さんに安心して旨いものを食べてもらえればそれで満足、天下泰平」と明るく笑う松崎さんが好きな言葉は、「初心忘れるべからず」。何事も一番始めの気持ちが大切だという。
目指すは、特別の味ではないけれど毎日食べてもあきないもの。なくてはならない空気のようなものを作っていきたい、と話してくれた。
傍らで、うなずきながら微笑む直子さん。そんな直子さんを見つめる目がとても優しい松崎さん。これからも家族仲良くスタッフのみなさんと一緒に愛される三松会館を大切にしていってくださいね。ありがとうございました。
三松会館
- 郡山市大町1-3-13
- 024-932-0173 024-932-0237
- 不定休
- http://www.miru.co.jp/support/sanmatsu/sanmatsu.html
2009.05.01取材 文:kame 撮影:watanabe