郡山全集|音楽は、たのしい
042 リベラリスムス
佐藤 倫(ベース)、長岡達也(ボーカル、リードギター)、阿部真志(ドラム)
ステージの上で生命を燃やす
誘われて、週末の夜にライブハウスを訪れた。
何ヶ月ぶりだろう。久しぶりのライブに心が踊る。
今夜のライブは、ロックバンド5組が演奏する。ライブハウスでロックを聴くのは初めてだ。少し緊張して演奏会場のドアを開けた。
ライブハウスの独特な雰囲気に包まれる。暗い空間、タバコの香り、低い波のようなざわめき。スポットライトの向こうはステージ。ちょうどお目あてのバンドの演奏準備が進められていた。
どの辺で聴こうかあたりを見回す。若い女性が多く、カップルで来ている人たちもちらほら見える。みんな思い思いの姿勢で飲み物を片手にステージを見守る。
突然、ステージが暗くなった。演奏が始まる前の張り詰めた空気が流れる。
ベースの音が静寂をやぶり、ドラムが低くリズムをきざむ。切れのいい声が流れにのり次第に大きな音の波へと変化していく。
ステージの側にあるスピーカーに近付くと音の振動に胸の鼓動が重なり、同じステージに立っているような感覚に包まれていく。
リベラリスムスは、ベースの佐藤倫(さとうりん)、ボーカル・リードギターの長岡達也(ながおかたつや)、ドラムの阿部真志(あべまさし)が演奏するロックバンドだ。
3人は、自分たちが奏でる音に思いを込め、ステージの上で3つの生命を燃やす。
流れる汗をぬぐいながら、音の出方に耳をこらし、声の限りをつくして歌い上げる。「自分たちの音楽を伝えたい、一緒にたのしみたい」そんな強い思いが熱く伝わってくるステージだ。
3人の出会いと覚悟、音楽への思い
3人で活動してから2年が経つ。
「多くの人に出会えた2年間、駆け抜けるような2年間でした。この歩調はこれからも変わらないと思う」
3人の出会いは、ボーカルの長岡がバンドのメンバーを募集したことがきっかけだった。ベースの佐藤、ドラムの阿部と巡り合いそれぞれの決意と覚悟を背負い「リベラリスムス」を結成する。
「出会った時には音楽への思いがそれぞれ違っていた。あっ新鮮だな、自分の中にはなかったものだなって思いました」次第にやりがいを実感していったと、佐藤は言う。
楽曲を作るのは長岡。「自分の中には、洋楽もののかっこ良さが基本にあって、ほとんどが英語です」自分が普段、思っていることを英語でつらつらと書く。
「悩みとか、迷いとか。世の中や戦争への思い、日々起きる犯罪の加害者や被害者のことなんかも。心の中をあまりカッコつけずさらりと表現したい」失恋の歌は書かない、英語は日々勉強中です、と笑った。
ニコラスとういうニックネームで呼ばれている阿部は、小さい頃からピアノを習い、音大ではコントラバスを学んでいた。
「ドラムとの出会いは、中学3年の時に文化祭でやったのがきっかけです。バンドをやることは自分にとって大きな決断でした」と話す。
仲間との出会い、家族の支えに感謝。
何ごとにもぶれない芯のようなものを大事にしていきたい。
主にホームタウンである郡山でのライブを中心に水戸、東京、いわき、仙台などで活動している。
去年は一年で40本近くのライブをしたという。週に一度の練習も欠かさない。
「仕事をしながらの練習や活動は本当に大変です。たくさんの人や仲間との出会い、家族の応援なしにはありえない。自分たちの力なんて半分にも満たない。だからこそいつだって支えてくれるたくさんの人と特別な時間を共有したい」
自分たちの音楽を通して支えてくれる人へ感謝したいという。
「リベラリズム」はイギリスの自由主義の思想。
「リベラリスムスは、そのドイツ語です。自分たちはこれからも自分らしさを大切にしていきたい」
何ごとにもぶれない芯のようなものを大事にしたい。変化しつつも自分たちらしさをつらぬいた音楽を続けていきたいと語ってくれた。
2008.10.17取材 文:kame 撮影:BUN