郡山全集|郡山のアーティスト
011 松本林(まつもとはやし)
二本松市出身、1968年6月生まれ
スーパーアコースティックギタリスト松本林
松本林は身長193センチメートル、長身のスーパーアコースティックギタリストだ。一本のギターで松本の指先は、いくつもの音色をダイナミックにセンチメンタルにリズミカルに奏でる。
「弾き語りではないので、ひとつのテーマをギターだけで表現しなければならない。独自のテクニックで演奏にのぞみます」という松本林。去年のうねめ祭りの駅前ステージでは、馬のひずめの音をギターで表現し、人々を湧かせた。子供たちが目を輝かせて聞き入ったという。
2005年12月に「ストリートミュージックフェスタIN郡山まちなか音ステージ」が郡山駅前広場で初めて開催されエントリーを果たす。松本は見事、第一回初代グランプリに選ばれる。「嬉しかったですね。大切な仲間も出来たし、松本ファミリーも増えた。大きく前に進むことが出来ました」それをきっかけに、郡山を中心に数々のイベントへ出演するようになる。
松本のオリジナル楽曲「トライアゲイン」。何かを始めるとき、リベンジするとき、こんな曲が聞こえてきたら頑張れるんじゃないかないか、夢や希望、勇気をバネに頑張ってほしいという思いを込めて作った。
2006年11月から2007年4月まで福島中央TVにて毎週月曜日PM9:54からHonda Cars福島中央TVCM曲「天気予報」のBGMとして採用される。
島根県の夕陽の見える公園で
松本林は、長距離トレーラーの運転手だ。大阪、北陸、鳥取、福岡。一週間のほとんどを走り続ける時もあるという。もちろんギターも一緒だ。
「休憩の時にギターを弾きます」北陸の日本海を望みながら、夕日が沈む山々を眺めながら、満天の星を仰ぎながら。
「印象に残っているのは、島根県の道の駅にある夕陽の見える公園で弾いた時のことです」テラスがあり、眼の前には海が広がる。夕陽が空を赤く染めゆっくりと海に沈もうとしている。
松本が夕陽を背にギターを奏でる。すると人々が静かに集まってきたという。お年寄りの夫婦、乗用車から降りてまっすぐ歩いてくる若いカップル。子供を抱いた若い父親。大きな犬を連れた男の人。みんな静かに聴いている。
「弾きながら感動していました。ギターをやっていて良かったと心から思いました」そこに居合わせた人々にとっても思いがけない野外ライブに幸せを感じたひとときだったことだろう。
大切なもの、ふたつ
「パパ、気をつけてね」幼い文字が書き込んであるその紙は小さく丁寧に折りたたまれてある。息子さんが小さい頃にくれたお守りだ。肌身離さず持っている。毎日、大きなトレーラーを運転するパパのためにいっしょうけんめい書いた文字、込められた思い。手に取りその文字を見ていると胸が熱くなってくる。
21歳の時ドライバーになり22歳で結婚した彼は、間もなく子供が生まれ父親になる。「小さかった息子も今は高1になりました。彼は今、ベースをやっています」月日は過ぎても家族のあたたかい思いが松本の支えだ。
数十人の子供たち一人一人の言葉が書かれた小さなファイルを見せてもらった。去年、ピアノ教室のクリスマス会に出演した時に寄せられた子供たちのメッセージ集だ。
松本の演奏を間近に見て聴いた彼らは、自分が感じたままの率直な心を書き留めてくれている。「大人とは違う子供の目」ストレートな言葉に胸を打たれる。
「このふたつが自分の大切な宝もの」と言う。
宝ものだと思う松本林の心こそが「宝もの」なのかもしれない。
2007.01.22 取材 文:kame 撮影:BUN