あっち、こっち。

100年先にも伝えたい、珠玉のアニメーション

この世界の片隅に

「この世界の片隅に」が劇場アニメ化されることを知ったのは昨年の夏の終わり頃、深谷シネマへ行った時のことだった。
上映時間までの間、お昼をいただいた食堂の壁にそのポスターはあった。

えっ、劇場アニメ化されるの?

こうの史代さんの本は以前から好きでほとんどが手元にある。
「この世界の片隅に」は上・中の2冊を数年前に読んでいた。
3冊目が出ていることを知ったのは、つい最近のこと。
急いで求め、読み始めたが途中つらくなってしばらく読み進めることができないでいた。
読み終えたのは劇場公開された頃だったろうか。

ポスターを見たときには、絶対に見に行くと決めていた。
けれど原作本を読み終えたばかりの自分には、劇場に行く気持ちになれない。
すずさんの声が、周作さんの声が、晴美ちゃんの声が自分の中に生まれていた。

やっぱり見に行こう。
意を決して映画館に向かったのはつい数日前のことだ。
大画面に懐かしい絵が広がる。
音楽が流れる。
ああ絵が息づいている。
すずさんの声が、周作さんの声が、晴美ちゃんの声が胸に届き、心はすっと画面にはいっていった。
物語はゆっくりと、時に足早に進む。
そしてクライマックス。辛い場面になだれ込むように連れていかれ、放り出された。
気がついたら身体中を何かがゆっくりと巡っていた。
温かい水のようなもの、涙としかいいようのないもので全身が満たされていた。

映画が終わり、ロビーで改めてポスターを眺めました。
下の方に
「100年先にも伝えたい、珠玉のアニメーション」
とありました。
「100年ふくしま。」と同じ思いをそこに見て胸が熱くなりました。

2017.3.11